死と同じように避けられないものがある。それは生きることだ。
カルベロ
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つい最近、「アーティスト」という映画が、サイレントからトーキー映画への移り変わりを1人のサイレント映画俳優の視点から描いていましたが、この映画はそれのルーツになっているのではないかと思えます。一世を風靡した道化師が落ちぶれて、足が麻痺して踊れなくなったバレリーナ、テリーを再起させ、でも自分はダメになる一方。それを愛を持って見守るテリー。テリーは道化師を愛しているけど、自分のような老いぼれとは吊り合わないと拒否してしまう。ありがちなラブストーリーだけど、とても切なくていいのです。この映画の見所は何と言っても、最後のチャップリンとキートンの共演です。サイレント映画時代の超名優2TOPが、映画で共演するなんて夢のような話です。キートンもまた、時代と共に変わり行く映画のあり方にうまく乗り切れずにいた俳優の一人でもありました。
サイレントのイメージが強いチャップリンですが、この作品は完全なトーキー。ちょび髭に山高帽がおなじみの、キャラクター的なチャーリーはほとんど登場せず、素顔で登場し、人間臭い役柄を演じています。ストーリーは、凋落したコメディアンが自殺未遂のプリマドンナを助けて自らもふたたび舞台に返り咲くという、自伝とは言わないまでも、自らの生きざまを反映させたようなお話です。色々な点でチャップリンの代表的なイメージとは一線を画す本作品。初期の名作を見て流れをつかんでから観賞した方が、より楽しめると思います。チャップリンのコメディアンとしての見どころもちゃんとあるのでご心配なく。特にクライマックスの舞台のシーンはバスター・キートンのゲスト出演で、ぜいたくなコラボレーションとなっています。
カルベロ
死と生の両方のもつ性質をみごとに言い当てている一言
カルベロ
落ち目であるカルベロは、再出発しようとするが、失敗を繰りかえしてきた。しかし、最後の舞台を、若く美しいバレリーナ、テリーの力添えや過去の栄光の力もあり、開くことができた。忙しなく支度をするカルベロに、以前、失敗したとき「劇場が嫌いだ」と言っていたのにとテリーが揶揄る。カルベロは道化の衣装を着ながら、ああ、劇場は嫌いだよ。と言い名言を言った。何か一つにかける情熱を分かりやすくした言い表した一言。
カルベロ
生きる気力を失くしているテリーに対して、生きることの素晴らしさを諭すために発した言葉