エレファント・マンのあらすじ・作品解説
巨匠デビットリンチが監督を務め、事実をもとに作成された映画である。モデルとなったのはジョセフ・メリックというイギリス人で、あまりにも人間とかけ離れた姿からエレファント・マンと名付けられ、サーカスの見世物小屋での生活を余儀なくされていた。 連れまわされているメリックと出会った外科医師の手により病院に入院し、スタッフなどから人間として扱われていくことで徐々に人間の心を取り戻していくが、その異形な姿ゆえに普通の人間にはなれない。その葛藤が彼を悩ませ、ラストシーンで「私も人間なんだ」と叫び、導き出した答えが、寝る時に横向きの姿勢を取ることであった。 普段寝る時は、頭が以上に大きいために抱えた膝の上に頭を乗せる格好なのだが、彼は普通の人間と同じように横向いて眠ることを望み、そのままま息を引き取ったのであった。翌日には頸椎が折れた状態で死んでいるメリックの姿が見つかったと言う。 1980年のアカデミー賞には作品、主演男優、監督など8部門にノミネートされたが、一つも賞を獲得することは出来なかった。
エレファント・マンの評価
エレファント・マンの感想
『エレファント・マン』ーー可視性という暴力の物語
獣姦の落とし子これほどまでに美しい強姦の場面があっただろうか? 映画が幕を開けて我々が最初に目にするのは美しい女の顔写真である。遺影を連想させるかのようなおぼろげなモノクロームの肖像、その上に不安とも憎悪ともつかない視線を我々に向ける女の顔が重ねられる。女は目の前にある何かに怯えている様子だ。フェードアウトの後に闇から現れるのは象の一群、そこに先ほどと同じ女のひきつった顔が再び重ねられることで彼女の視線の先にあるのが象であることが明かされる。そして凄惨な凌辱の場面が我々の眼前で繰り広げられる。画面に向かって迫りくる象。そのうちの一頭が咆哮とともに巨大な鼻を振り上げ、女を荒々しく地面に押し倒す。スロー・モーションで描かれる暴力と苦痛。顔を歪めて首を激しく振る女のクロースアップ。土埃を巻き上げ、大きな耳をはためかせながら、象はあまりにも露骨な男根の象徴である長い鼻を突き動かす。そして子宮に...この感想を読む
子供の頃、この作品が怖くて仕方なかった
私が最初に「エレファント・マン」を目にしたのが幼稚園ぐらいだったと思います。映画館に他の映画を観に行った時に上映していて、あの袋を被った姿が怖くてしばらく一人で眠れなかったのを覚えています。その頃は「ホラー映画」と思っていたのですが大人になって見るとある青年の生涯を描いた作品だと分かりました。主人公のジョンは母親のおなかにいる時にお腹を踏まれてしまいあの姿になってしまう。自分の醜態のために見世物小屋で働くジョン、そこへ医師のトリーブスが来て興味を持ち、ジョンを研究したいと病院の屋根裏部屋で生活をさせる。ジョンは見た目で怖がられることもある、そのせいでジョンも人を避けて生活をしていた。その中、ジョンが聖書を好みとても心の美しく優しい人間だということに気づく。最後は仰向けに寝てはいけないのに、仰向けになっている状態で死んでいるジョンが見つかる。自殺なのか事故なのかと物議を醸したようですが、...この感想を読む
実話
デヴィット・リンチというと、デビュー作の「イレイザーヘッド」のようなカルト的でシュールレアリズムな作品を作るイメージがありますが、この作品「エレファント・マン」はそういうデヴィット・リンチのイメージとは違った、実在したジョン・メリックという人物の生涯を描いた、ヒューマンドラマです。ジョン・メリックという人物は、胎児の頃に母親がお腹を踏まれ、生まれた醜い顔で生まれてきます。その顔が像みたいだから、エレファントマンという由来です。かなり、えげつない話ですがこれが実話だという衝撃と、やさしいメリックの人間性が心をうちます。特殊メイクはエグいほどによく出来ていますね。