新本格派始まりの作品
推理モノ、と一口に言っても、色々と種類がある。 刑事を主人公とした刑事モノなのか、足で歩き回りときに襲う火の粉を振り払うためアクションをしたりするハードボイルドモノなのか、それとも普段の生活にある些細な謎を中心にした日常モノなのか。 この作品は、どれでもない。 推理小説と言って頭に思い浮かぶ古典的な『探偵は人々を集め、さてと言い』に近い。 フーダニット(誰がやったのか)・ハウダニット(どうやってやったのか)を主軸としながら、探偵ではないけれど作者から『探偵役』を振られた登場人物の視点で話が進む、オーソドックスにして見事な推理小説である。 この作品以降、『新本格派』という言葉が生まれた。本格というのはつまり、クリスティ、カー、クイーンなどの欧米の名手たちによる名作推理小説を指し、それとは違い日本の風土で日本人が読みやすいよう仕立て上げられた推理を主軸とする小説を書く作家のことを、新本格派と呼ぶようになったのである。 この作品は日本の新本格派の契機となった作品だけあって、世に出てから20年以上経つというのにその衝撃は少しも色褪せない。本当に名作だ。 『Another』で綾辻行人を知った方も、ぜひ、この作品には目を通していただきたい。
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