水車館の殺人のあらすじ・作品解説
『水車館の殺人』は、綾辻行人による本格ミステリ第二弾である。 綾辻行人は『十角館の殺人』で、いわゆる「新本格ムーヴメント」を引き起こし、その時代におけるミステリの方向性を決定づけた。本作は、その作者による二作目の小説としておおいに期待された。 この作品の舞台となる「水車館」に集うのは、館の主である仮面を被った男や、その妻である謎の美少女、他にも館の執事など……、といったように、奇妙な人間ばかり。そうして徐々に殺人劇が始まってゆく――。 謎の失踪者に生まれる密室、そして現れる訪問者。現実における殺人に、過去の殺人事件が想起され――。そういったミステリ要素が綾辻行人によって幻想的に描かれている、注目のミステリである。 また、2008年には〈新装改訂版〉となって新たに出版され、さらに読みやすくなった。 ただ、注意したいのは、この作品は《館シリーズ》の二作目ということであり、出来るだけ前作を読むことが推奨されている。
水車館の殺人の評価
水車館の殺人の感想
風景画のような舞台
綾辻行人の『館シリーズ』2作目。前作から引き続き中村青司の建てた館が舞台となり、登場人物・島田潔を探偵役として話は進む。『館シリーズ』の骨子がこの作品で固まった、といっても過言ではないだろう。トリックとしてはわりとシンプルな部類ではあるが、現在と過去が入り乱れる文章は、読み手の目くらましとなって物語を見えにくくし話を難しくしてくれる。相変わらずの嬉しいクローズドサークルという舞台に、『招かれざる客』として探偵役が紛れ込むのも、王道を楽しみたい人間にはご褒美のようなものだ。この作品の館の主は画家ということで、随所に絵画の話が出てくるが、その画面を説明する文章と館の佇まいもあって、なにか風景画のような印象を抱く作品だ。その風景画は惨劇など相応しくないように思うが、それでもこのストーリーが似合ってしまうのは不思議だ。
面白いです。
綾辻行人の館シリーズ2作目。トリック的な意味では、前作ほどの衝撃は受けないと思います。ですが、作品の雰囲気も良いし、私はお気に入りの1冊です。中村青司の建てた水車館で起こる殺人事件。過去や現在を行き来して物語を進めるあたり、最初は気づかなかったけど、最後まで読むと「なるほど」と思えるところも多数あり、こういう物語の進め方は流石としか言いようがありません。文章もすごく読みやすいです。この作品はミステリー好きの方は、トリックや犯人はすぐに分かってしまうらしいのですが、それでも、この作品はとても面白いと思います。ちょっと古い作品ですけど、ミステリー好きだけど綾辻行人は読んだことがないって方は、ぜひ読んで頂きたい1冊です。