人形館の殺人の評価
人形館の殺人の感想
ホラー要素満載
綾辻行人の『館シリーズ』4作目。もともと綾辻氏は『眼球綺譚』などの著作からも判る通り、ホラー小説の分野でも傑作を揃える大御所である。この作品は、その綾辻氏が推理小説の中でほんの少しホラー要素を多く盛り込んだ作品と言えるかもしれない。氏にそんな想定はなかったとしても、この作品の舞台である人形館は夜中に読むと薄ら寒い。暗がりにマネキンがある状況など、想像するだけでも得体の知れない恐怖を覚えるのだから、それがマネキンだと解っていても恐怖は同じだろう。今作の舞台である建物には、実は『人形館』という仰々しい名前はついていないが、それも読み進めれば意味のあることで、『館シリーズ』の中でも取り分け心に重いものが残る作品となっている。この前までのシリーズ作品とは少し様子が違うが、それも楽しんで欲しい作品だ。