君の膵臓をたべたいの辛口レビュー
恋という言葉じゃ言い尽くせない絆の物語
出会いから、別れまで、ふたりの間には、好きだとか付き合おうとか、具体的な言葉が交わされることはついになかったけれど、ふたりとも同じようにお互いのことを考えていた。
なんでもやってみたがる少女と、なんにでも付き合ってしまう男の子の、息が合っていないようでピッタリな日々。
日常を楽しむどこにでもいる普通のカップルのようなふたりが抱える大きな大きな闇。
恋い焦がれた彼女は、その想いだけを残して意外な形でいってしまった。残された男の子の、溢れ出した気持ちや言葉が、胸を刺す。
彼女の想いと優しさと強さ
なぜ、普通の少女がこんなにも強くいられるのか?
そのこたえを小説の中から見つけようとしたけれど、結局彼女の人並外れた優しさと強さの根拠がわからなかったのが残念だ。
そして、少女の男の子への想いを押し殺す姿は胸を痛くさせた。
男の子がノーと言わない理由
これももうすこし説得力が欲しかったなあという印象。
流されることを良しとする感覚は理解できるけれど、余命わずかな少女の頼みだからというのも理解できるけれど、普通の少年に、そこまで付き合ってあげられる器量があるのだろうか。そんな少年いただろうか。と少し意地悪に見てしまった。
総評
とにかく泣けます。泣けるんです。だけどわたしは好きではなかったのです。『こんなの泣いて当たり前』要素をこれだけ盛り込まれたら、盛り上がりたいところで(ああ、またまたおきまりの展開かあ)と白けされられました。
病気の彼女、余命数カ月の彼女、彼女のサプライズ旅行、思いがけず同じ部屋に宿泊、お酒の力を借りて…、クライマックスの少女の亡くなり方…すべての設定が悪言い方をすればありきたりで、そして泣けて当たり前で、泣けるのだけど心の底では白けさせられている自分がいたんです。なので、星は少なめです。普段あまり辛口のレビューはしないのですが、この本については期待が大きかった分、(なあんだ)という残念な気持ちにさせられてしまいました。
登場人物たちは、魅力的でそこに実在するかのように、作り込まれていました。あ、この子ならこうするんだろうな、やっぱりこうするよね、といったように行動とキャラクターに矛盾がないのがよかったところです。
もう少し殻を破れていたら…というのもこの年代特有で可愛いなあと思わされます。
この作者さんの作品は、未だ他を読む気にはなれません。
王道パターンを読むんだったら、昔の純小説を読んでようかな、という感じです。
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