「君の膵臓をたべたい」を語らせていただく
「君の膵臓をたべたい」というタイトル
この本の話をすると、必ず言われるのが「タイトルに抵抗を感じる」ということです。たしかにタイトルからは内容も想像し難く、手に取るには多少躊躇ってしまうほどインパクトのあるタイトルだなぁと私も思います。
しかし、読んで見ればわかるとおりこのタイトルこそが作品の全てを物語っていると言っても過言ではないと私は思うのです。
主人公と桜良の関係を表すにはまさにピッタリとはまるような、「これしかない」と思わせるような、そんなタイトルであると。
そして帯にも書いてあったとおり、読み終わってタイトルを見直した私は見事に号泣してしまいました(笑)
共病文庫
桜良がつけていた「共病文庫」という名の日記。これはラストの盛り上がりで重要な役割を果たすキーアイテム。
そして桜良の思いが詰まった宝物。きっと読者の皆様にとってもそうであることでしょう。
思い返せば二人の出会いも共病文庫あってこそのもので、喋りこそしないもののかなり大きな存在だったんですね。これを桜良が忘れなければ、主人公が見つけていなければ、二人はとんでもなく素敵な青春を過ごすこともなく、主人公が桜良に振り回されることも、他人に興味を持つこともなかった訳ですから、共病文庫様様、ですよね。
恭子さん
彼女は桜良の親友であり、最初は主人公に敵意を向けている存在でもありました。
彼が桜良となにをしていようとお構い無しに隣にいるだけで番犬のように鋭い眼光を向ける、とても頼もしい恭子さん。
そんな彼女は桜良が大好きで、桜良が亡くなったあと主人公から共病文庫を見せられた時には恨みの念すら感じるほど感情をぶつけ、泣きじゃくりながら彼女の名前を呼びました。
そのシーンを読んで、私は彼女のファンになりました。それほどまでに愛されている桜良が羨ましくもあり、一番は自分の人生を棒に振ってまで彼女のことを優先出来た恭子さんの心に憧れ、とてつもなく惹かれました。
最後は恭子さんが主人公に歩み寄り、生前の桜良と彼のように仲良くなっていましたね。
二人で桜良の墓に手を合わせるシーンや恭子さんがひしゃくで水をぶっかけるシーンはとても微笑ましく、思わず頬が緩んでしまいました。
どうやら恭子さんはガムの彼に好かれているらしいことを知って嬉しかったようですし、また新しい恋が始まるのでしょうか?
そんなことを想像しては幸せな気持ちに浸っています。
主人公の呼び方
彼は終盤まで名前を明かされずに、 【秘密を知ってるクラスメイト君】と言うように書かれていました。
ガムの彼が「 【地味なクラスメイト】ぃ」というように呼んでいたおかげでほんのちょっとだけ名前のヒントが出てきて、必ず当ててやろうと奮闘していたのですが、結局そんなに簡単に当たるわけがありませんでした(笑)
これも彼が共病文庫に名前を載せないでと言ったことやそれによって桜良が彼の名前を隠してしまったことで彼は最後まで彼女が自分を心の中で、自分だけではなんと呼んでいたのか分からずに残念がる、というシーンに繋がっていて、さすが作家さんだなぁと感心させられました。とはいえ初めて読んだ時はひたすら号泣で読み進めることに必死になっていたので、こうやって冷静に考察を述べられるのも落ち着いて何度も読み返してこそだなとしみじみ考えております…
そんな彼の名前ですが、 【志賀春樹】と名乗った後に桜良のお母さんが聞き覚えがある、と仰っていたのは誰のことだったのでしょう…?唯一そこだけが分かりませんでした。
これはまた何度も読み返したり調べたりしながら解き明かしたいと思います。
全体のテーマと作者様への愛
この作品に出会い、私はこれまでのどんな時よりも命について、友達について、恋について、生きるという全てのことについて考えさせられました。そして、それから自分の意思で、「努力」というものをしてみようかなと思い立ったのです。
それからはバイトをして、身の回りのお金は払えるようになって、私自身本当に成長できました。
これほど読みやすくも深い、自分が変わりたいと思える作品とは今まで出会ったことがありません。
こんな素晴らしい作品と出会わせてくれた作者の住野よる先生とこの作品に関わってくださった全ての皆様には感謝と尊敬の気持ちでいっぱいです。
そして、今このレビューを読んでくださっている方と、この気持ちを共有できていたらなぁと、切に願っています。
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