マクロスに負け、ジブリに負け・・・こうしてZZは黒歴史になった - 機動戦士ガンダムZZ[ダブルゼータ]の感想

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機動戦士ガンダムZZ[ダブルゼータ]

3.303.30
映像
3.40
ストーリー
3.20
キャラクター
3.60
声優
3.80
音楽
3.80
感想数
5
観た人
7

マクロスに負け、ジブリに負け・・・こうしてZZは黒歴史になった

1.51.5
映像
1.5
ストーリー
1.0
キャラクター
2.0
声優
2.5
音楽
2.5

目次

プレリュード「ZZ考察」

本作「機動戦士ガンダムZZ」(以下ZZと呼ぶ)は1986年3月より10か月にわたって放送された。

79年に放送された「機動戦士ガンダム」(以下ファーストと呼ぶ)から「機動戦士Zガンダム」(以下Zと呼ぶ)に続く富野由悠季が監督を務めたガンダムの3作目である。その後数々のアナザーガンダムが作られていくが、本作はガンダムの生みの親である富野氏の監督作品、「正史」として作られたはずなのに、後に「黒歴史」的ポジションになっていく。20年の時を経て劇場版としてリメイクされたZは本作につながらない結末になっており、それを「正史」とするならば本作はなかったことになる。

一方、本作の存在は「逆襲のシャア」(以下逆シャアと呼ぶ)や「機動戦士ガンダムUC」(以下ユニコーンと呼ぶ)では本作の流れを継承しているのでなんとも複雑だ。

何故このような結果になったか、富野氏のメンタリティやガンダム世界を中心とした考察は無数にあるので、ここでは当時のアニメ界を取り巻く外的状況を見ながらZZを語りたい。

キーワードは「ガンプラ」「バブル」「ジブリ」「マクロス」だ。

「ファーストガンダムの七光り」の終焉

ファーストガンダムは言及するまでもなく40年近い時が流れた現在でも神的作品だ。これが劇的であったが故に、いまだに「ガンダム」は続いているのだ。

と、これは純粋に作品を見た上での感想をベースにした語りだが、真実は果たしてそうか?

違う!

ガンダムが続いているのは、ガンプラやゲーム、DVDソフトが売れるからである。もっと露骨に言えばバンダイという会社が存続するために新たなる「ガンダム」が生み出され続けているのだ。 

ファースト放送時、ガンプラが売れたのは「結果」であった。

「子供向け玩具」という扱いから「社会現象」「大人のコレクション」に変貌したガンプラ。戦車や戦艦のプラモデルで使われていた「スケールモデル」という概念を持ち込むなど、マニア受けを狙う戦略性はあったものの、これほどの市場になるとはバンダイもサンライズも、誰も予想しなかっただろう。

予想していなかった時点では「僥倖=偶然に得られる幸せ」であったガンプラ人気だが、一度味わってしまえばより一層甘い蜜をすすりたくなるのが人間である。

ガンダムに続いて作られたイデオン、ザブングル、ダンバイン、エルガイムは作品としてはどれもそこそこに人気はあったが、スポンサーにとっては商品売り上げが「ガンダム」に及ばなかった。(イデオン、ダンバインに至っては不振と期待外れの極致だっただろう) 

「ガンダム」を超えるのは「ガンダム」

やはり「ガンダム」を超えるのは「ガンダム」しかない、と考えたバンダイはZを生み出す。

そして作品として迷走し、富野由悠季はもはや終わっている、とファンが確信した内容にも関わらず、ガンプラは売れた。

ファンが感情移入しにくいカミーユという主人公が、更に精神崩壊するというやるせないラストを迎えて尚、ガンプラは売れ続けた。作品としての「ファーストの七光り」は富野の作家としての能力枯渇により終焉を迎えたのに、アニメファンはZを見終えた後次々と卒業していったのに、ガンプラは売れ続けたのだ。

これにより作品性を問わない、ガンプラの販売戦略としての「ガンダム」が生み出される母体が出来た。それがZZだったのだ。

そして時に1986年、日本はバブル景気に沸き返る。

もっと甘い蜜を!もっと金を!誰もがそう信じた時代だ。バンダイももっともっとガンプラを売って利益を出すのだ!と思ったのは当然のことだ。

カミーユが崩壊?ファンがついてこない?そんなことは知るか!俺たちはガンプラを売りさえすればいいんだ。作品性など関係ない、かっこいい戦闘シーンを書け!新しいモビルスーツをどんどん出せ!ファーストで人気があったザク、ドム、ゲルググのバリエーションをジャンジャン作れ!バリエーションなら製造ラインを大きく作り変えなくて済む。こんなおいしいことはない!

これがZZの制作理念だ、と私は思っている。 

ヴァルキリー VS Zガンダム

ZやZZに先立つ1982年、「超時空要塞マクロス」がアニメ商品界に激震を起こす。

現実に存在するような戦闘機形態からかっこいい人型に完全変形するヴァルキリーが誕生したのだ!

ストーリーはポップで軽い。面白いけれど、正直に言えばファーストのような感動はない。

しかしヴァルキリーは売れた。何と言ってもカッコいいのだ。

Z制作時、バンダイはこのように考えたのではないか?

Zのあの神アニメ「ガンダム」コンテンツ、神アニメの主役メカとしてヴァルキリーを超えなければならない!戦闘機体型からの完全変形は絶対だ!

そうして生み出されたウエブライダーからZへの変形は確かにカッコいい。だがヴァルキリーを超えたか?答えはNoだ。

取り外して付け直す部品が合ったり、プラモとしての完全変形に無理があったりしたのだ。

しかしヴェルキリー VS Zの単体では負けていてもガンプラというコンテンツでは圧倒的に勝っている。

それを踏まえて生み出されたZZは、ファーストのGアーマーに回帰した。

ヴァルキリーやZのような細いフォルムではなく、ロボットヒーローアニメとしての力強さを求めた結果、完全変形ではなく合体変形、しかも頭部にスーパー兵器を装備することになった。

ファーストファンにとってZZはモビルスーツではない、と言ってもいいかもしれない。

しかし、Zから引き続き登場するMK-Ⅱ、Z、百式は十分に売れた。そして策略通り、ザクⅢやドワッジ、リゲルグなどのファーストオマージュのMSも売れた。

このようにして作品性は低迷しているのに商品は売れる、感動と商業性のかい離が進んでも「ガンダム」ワールドはつづけられるという不思議な流れは日常化していった。

その陰でアニメそのものの歴史を変える礎が、静かに築かれていた。

ロボットアニメブームの終焉、そしてジブリ1強時代へ

84年、後に「新世紀エヴァンゲリオン」を生み出すガイナックスが設立され、85年(意外にもガイナックスより後に)スタジオジブリが誕生した。

スタジオジブリとしての宮崎駿の第一作「天空の城ラピュタ」はZZ放送中に公開されている。

富野氏が虫プロ時代から宮崎氏をライバル視していたことはあまりにも有名なのでここでは詳しく触れないが、「聖戦士ダンバイン」は「風の谷のナウシカ」を意識してファンタジックなものを狙った、という。

しかし誰の目にも勝敗は明らかだ。「ナウシカ」より「ダンバイン」が好き、という人は多数いるだろうが、作品の完成度と問われた時「ダンバイン」が上と答える人は皆無だろう。

このようにしてアニメブームは続いていても、ロボットアニメブームは終焉を迎える。そのとどめを刺したのは本作ZZと言って良いだろう。

ファーストで感動したアニメファンは既に「ガンダム」ではなく「ジブリ」に感動を求めるようになった。

この時点で「ガンダム」はガンプラの傀儡と誰もが認識した。

もはやストーリー性で勝つ見込みが無くなった富野氏は、ZZ制作時にZのような暗い作風を避け、子供向け色を盛り込む。

それは、「無敵超人ザンボット3」、「無敵鋼人ダイターン3」、そして「機動戦士ガンダム」でアニメは子供だけのものではない!俺たちは大人も楽しめるものを作るんだ!と息巻いてきた富野由悠季を筆頭とするロボットアニメ制作陣の敗北宣言と言えるかもしれない。

そして「ガンダム」の名は汚された。

作品性はなくとも、モビルスーツが活躍すれば「ガンダム」を名乗って良い、という図式ができたのだ。

これこそがZZが黒歴史とされる背景である。

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