結局どうしたかったのかわからない作品 - 窓の魚の感想

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窓の魚

3.633.63
文章力
3.88
ストーリー
3.38
キャラクター
3.63
設定
3.38
演出
3.50
感想数
4
読んだ人
4

結局どうしたかったのかわからない作品

3.53.5
文章力
4.0
ストーリー
3.0
キャラクター
3.5
設定
3.5
演出
3.5

目次

生粋の西加奈子ファン

この作品は4人の視点からそれぞれ温泉旅行の流れに沿って思い思いのことを振り返ったり考えたり、という構成になっています。時々名前もない人のインタビューのような段落がありますが、それはなんと言いますか、アクセントとして組み込まれている文章で、特別何かを感じたり感情移入するというわけではなく読み進めました。私はこの作品に対して何も感じませんでしたし、よくわからないまま終わってしまったという気持ちがとても強いです。私は「白いしるし」や「うつくしい人」が西加奈子さんにハマるきっかけになった作品で、二作とも最後にかけて力強さを感じましたし、強烈に西ワールドに引き込まれたのを覚えています。だからこそ、一読だけでは理解できないこの作品をどう処理したらいいのか今の時点では決めかねているというのが素直な感想です。他の方の感想を調べてみたのですが、皆さんやはり生粋の西加奈子ファンで、いろいろ作品の中から西加奈子さんが表現しようとしている意図を汲み取ろうと、結末を想像しながら読まれているようでした。しかし、私はただ混乱するだけで、まずナツの見ている幻想が何なのやらチンプンカンプンで、そうしたら老夫婦のインタビューのような文章が始まり、ナツは死んでしまうの?とさらに頭の中がごちゃごちゃしてしまいました。これを何だ何だと整理できずに読み進めるのに苦労しました。実は初めて開いたときはナツの視点のみを読んで一度本を閉じてしまったくらい、私にはこの世界にすっと入り込むことはできませんでした。まだまだ修行が足りません。

アキオとナツ

アキオはもともと病弱で、運動もまともにできないほどのもやしっ子です。もやしっ子というイメージとは少し違うのですが、私はようはもやしっ子だろ、とアキオを結論付けて読みました。自分と同じレベルの病弱か、はたまたそれ以下の不健康さを持っている生き物に対してとても愛情が深くなるという偏屈ぶりに寒気がしました。ちょっと理解できません。いや、この作品の登場人物はみんな理解できない非凡さを持っているので、アキオだけに限りませんが。アキオはナツに対して居心地が良く、それがエスカレートしてか薬物を知らずしらずのうちに飲ませ続け、ナツはデロデロの状態になってしまうのですが、それが愛おしとは、ナツもアキオと出会ったばかりに薬物中毒者にされてしまって、可哀想とは思いませんが、彼らの関係性が気持ち悪くて気味が悪くて、私自身が持つ感情と彼らの大切にしている愛情の根っこの部分がどんどん裂けるように遠ざかっていきました。読み進めていくうちに彼らに体温を奪われていくような、そんな寒さを感じました。もし、共感を狙うのではなく、屈折した愛の育み方を見せることで抱く不気味さを狙っての構成であれば、西ワールドに実はどっぷり浸かっていたことになるので、してやられたと思うのですが。アキオの手のひらで、檻の中で踊らされ続けるナツを見て、または後々訪れるだろうナツの死をアキオは悲しむのだろうか。きっとアキオは悲しみながら、自分の与えた死によってナツが死体になったことを喜ぶのだろうなと、読み終わって背中に寒さを感じながら思いました。

結局身元不明の女性は誰?

きっとトウヤマに電話をしてきた女性なのだろうと思いますが、足に牡丹の刺青を入れたナツが見た女性と同じなのでしょうか。ナツが薬物で幻覚を見てしまうほど異常な状態なので、この一致に私は自信がありませんが、素直に読んで同じ女性だと思います。しかし、初めはナツが薬物多量摂取で亡くなってしまったのだとばかり思って読み進めていたため、どうして4人にあまり関係のない、死体になることだけを目的に登場した女性をわざわざ作り出したのか、西加奈子さんの考えがわかりません。そして、トウヤマに電話をしてきた女性は、ハルナの母親なのか。これはきっと違うと思うのですが、これでハルナの母親で、親子でトウヤマと関係を持っていて、しかも温泉旅行で訪れた旅館で亡くなるのか。考えても考えてもわかりません。全てを繋げようとすることがいけないのかもしれませんね。一つ一つ離して考えれば、トウヤマの電話相手でも、ハルナの母親でも、ナツの幻覚でも、それぞれ違う女性が存在していて、どれもこれも結びつかずに独立した女性たちと思えば、しかし、結局じゃあ誰なの?という疑問に結局帰ってきちゃうんですね。旅館に泊まっているのは2〜3組で、そのうちの一組は老夫婦、もう一組は亡くなった女性で、そしてナツ、アキオたちの4人。身元不明の女性ということが不思議で、しかし、旅館の帳簿なんていくらでも誤魔化せてしまいますもんね。身元の分かるものをすべて捨てて仕舞えば、見知らぬ土地の人間からしてみれば誰が誰だかわかるはずもありませんもんね。もしかしたら、すべて繋がっている女性なのかもしれませんし、トウヤマの電話相手、という決着のつけ方でもいいんですよね。けれど、私自身腑に落ちなくて、納得がいかなくて、はっきりとどの女性だったか種明かしをしてもらいたかったなあという気持ちが残ったままです。

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これは恋愛小説ではない、サイコホラーだ!本作には4人の男女が登場する。それぞれに自分の過去やトラウマ、大小の秘密を持ち、それらを絡めつつ共通の1日を語る、という実験的スタイルで話が進んでいく。2008年、小説新潮に3か月間の連載で発表された。一見するとサスペンスのようでもあり、恋愛小説のようでもある。しかし、好きという感情は含んでいても、本作は恋愛メインの小説ではない。別の人物が同じ出来事を語る中で、次第に真実がわかる、というのは推理モノではよくある展開ではあるが、本作は最後まで細かい所を明かさないので、別々の視点が纏まった時、何かの真実が見える、というスッキリした読後感を望んだ読者は、激しい肩透かしを食らうだろう。女性の死体の素性についてははっきりと語られないし、個々のキャラが行きつく先も明確にならない。スッキリどころか最終章であるアキオの章は中盤以降どす黒い闇だらけで、最後にちょっ...この感想を読む

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4.04.0
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