鎌倉の風を感じる作品
女姉妹ってやっぱり素敵
私には男兄弟しかいないので、昔から姉妹に憧れを持っていました。
三姉妹の友人から聞いたことがある姉妹あるある的なエピソードが描かれていて、作品中の姉妹同士の会話や暮らしぶりは凄くリアリティーがあります。
読んでいるとまるで自分も家族の一員になったかのような気分になって、姉妹に憧れていた私にはとても興味深いです。
同性だからこその面倒くささや揉め事なんかもありますが、家族だからこそ同性だからこそ支えてあげられる部分があって読んでいると本当に羨ましくなります。
男兄弟にはない信頼関係が姉妹にはあるんですよね。やっぱり女姉妹って素敵です。
複雑な家庭環境
香田家は一般家庭と比べると複雑な家庭環境です。なのに、香田家の三姉妹には複雑な家庭によくある悲壮感は全くなくて、ただただ普通に社会生活を送っています。
むしろ、規則正しい生活で朝食と夕食は基本的に毎食家族で食べているなど丁寧な暮らしぶりが垣間見れます。
社会人になると実家に住んでいても家族全員で食事を摂る機会って減ってしまう人が多いと思うのですが、この三姉妹はそれぞれ全く違う職種の仕事につきながらも一緒に食事を摂ります。
これって彼女達を主に育てたであろう祖母の影響が多大にあるのでしょう。とても丁寧に愛情深く彼女達を育てていたのだろうと感じます。この祖母の育て方が根底にあるからこそ、父の不倫相手の子という敵とも言える存在のすずを引き取るという選択をしたのでしょう。
引き取ると言い出したのは長女の幸ですが、他の2人も戸惑いながらもすずの存在を受け入れ全く邪険に扱うことなくすずを優しく受け入れます。
香田家も十分複雑ですが、すずの幼少時からの家庭環境は更に複雑で辛いものだったでしょう。父親はすずを可愛がっていたでしょうが、早くに母を亡くし更にその父さえも亡くなってしまい再婚相手の元に一人取り残されたすずの気持ちを思うといたたまれない気分になります。
初めて会った異母姉妹の誘いにのるのも勇気がいったことでしょう。そんなすずが物語が進む毎に香田家に馴染み、他人の顔色を伺うためではなく本当の笑顔が見れるようになって明るくなっていく様はとても心温まります。
タイプの違う三姉妹が三者三様にすずとコミュニケーションを取りながら、少しずつすずと打ち解けいき、本当の家族になっていくのが伝わってきます。
鎌倉に行きたくなる
この作品は鎌倉が舞台ですが、鎌倉じゃなければいけない設定は殆どありません。それどころかコレぞ鎌倉!という描写もあまりありません。
しかし、私はこの作品を読んでいると何故か鎌倉の海風を感じるのです。ビュービューと吹く強風ではなくて、爽やかなそよ風です。
この作品は起承転結がハッキリしているワケではなく盛り上がりに欠ける坦々としたもので、色に例えると透明です。
しかし、その透明感に惹きつけられ、鎌倉の風を感じ、「あー、鎌倉に行きたいな」という気分にさせてくれる不思議な作品なのです。
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