櫻の園のあらすじ・作品解説
『櫻の園』は、月刊少女漫画雑誌『LaLa』で1985年から1986年にかけて連載された吉田秋生による漫画作品で、ジェッツコミックスから通常版が全1巻刊行されている。また白泉社文庫から文庫版が、花とゆめCOMICSスペシャルからは完全版がそれぞれ全1巻ずつ刊行されている。1990年には中原俊監督により実写映画化された。この映画は、1990年度のキネマ旬報ベスト・ワンを受賞するなど高い評価を受けている。さらに2008年にも同じく中原俊監督により再度実写映画化された。こちらは、現代的な要素を取り入れ、青春ガールズムービーとしての色彩が強い。1994年には初めて舞台化された。続いて2007年、2009年、2011年にも本作を原作とする舞台が上演されている。 この物語は、女子高を舞台に、演劇部に所属する少女たちの思春期の心情を描いている。また、この作品は「花冷え」「花紅」「花酔い」「花嵐」の全4章からなるオムニバス漫画のため、章ごとに主人公は異なっている。
櫻の園の評価
櫻の園の感想
30年前の作品ですが、今もまったく色褪せない、女子必読の書
伝統ある女子校で毎年上演されるチェーホフの『櫻の園』。その配役をモチーフに、演劇部に所属する4人の女子生徒を軸として、思春期の女性の鬱屈をあらわした名作。発表当時の吉田秋生の作風は、現在のような洗練されたものでなく、登場する女性達の体型はずんぐりとしていて、表情も化粧っけがなく、髪もスミベタ、という地味な絵柄だ。にもかかわらず、ステレオタイプな女子高生像からかけ離れた、しかし確かに「彼女たち」しか持ち得ない情感をぐぁっと打ち出した、その力量には今でも圧倒されるしかない。女子校特有の「エス」のノリや、セックスに対する戸惑い、女同士の関係の微妙な綾など、恒久的なテーマが、ひとつの芝居をやり遂げる「同士」としての関係を軸として描かれている。これを読んでいると、学生に戻りたくはないけれど、こんな学生生活もいいなァ、とちょっとだけ思ってしまいます。