花の鎖を読みました。
『高野美雪』(祖母)→『高野(前田)紗月』(母)→『前田梨花』(孫)の三代にわたる物語です。
両親を亡くし、祖母もガンで入院中に勤務先が破綻した梨花。
伯父夫婦のすすめで職場結婚したが子供ができずに悩む美雪。
公民館で水彩画教室の講師をしつつ和菓子屋でバイトをしている紗月。
-そして、3人の女性の人生に影を落とす謎の男『K』
1章ごとに『花"』『雪"』『月』の3人の物語が進んでいき、それぞれ時代背景や家族についての詳しい事など分からないのだが、章が進むにつれ無関係のようだった3人が段々とつながっていきます。
『雪月花』それは3人の名前に付いているだけでなく、この物語の中でとても重要な鍵を握っています。 真実が分かるに連れて謎解きが出来た事に喜びを覚える一方、明らかになった事実の悲しさが滲みでてきそうでした。
高野美雪の夫は美雪の従兄である設計事務所社長により、夫が設計した美術館の名義を会社名にされた挙句、事故により亡くなった。しかも、その原因は従兄が無理やりに美術館建設予定地の山に登ろうとしたせい。大学生になり山岳部で出会った先輩の男性と『高野紗月』は恋愛関係になるが、実は彼は紗月にとって『はとこ』の関係になる母親『美雪』にとっては宿敵の息子であることが判明し、判れる。そしてその後仕事先で出会った『前田』という男性と結婚。
『前田梨花』は子供のころから母親あてに送られてくる豪華な花束の送り主『K』の正体に疑問を持ったが、両親は何も明かさないまま二人そろって山登り中の事故で死亡。失業中の梨花は祖母『美雪』の手術代の捻出のために、『K』という人物に借金を頼むために、正体を追及しようとし、ようやく、祖母・母親から繋がる因縁を知ることになる。
『K』の正体は、かつての『紗月』にとって『はとこ』であり『別れた恋人』であった人物で別離後、『K』は『紗月』の友人と結婚、数年後その『K』が白血病になり白血球の型が一致する『紗月』を頼ってドナーになってくれるよう頼むが、『紗月』は一度は拒絶するもドナーになることを了承、『美雪』も娘の意志を尊重して黙認する。
その経緯から、それ以降『K」』感謝の意味を込めて花束を贈り続けていた。
その『K』も数年後亡くなり、現在はその息子が父の遺志を継いで不本意ながら送り続けていた。
最終的に、それまで交流が断絶していた『K」』家族と『梨花』は面会し、過去のいきさつを全て知ることになる。そして、もし自分達に恩義を感じ罪悪感を免れる術を求めているのなら、競売に出されているある『絵』を落札し、祖父が設計した美術館に寄付してほしいと頼む。その『絵』は祖母のお気に入りの絵であり、その絵にインスピレーションを得て祖父が美術館を設計した思い出の『絵』。そして、その『絵』の前で祖母『美雪』と孫『梨花』は万感の思いで満たされるという話です。
3本の鎖
3本の鎖をほぐして1本に編みこんだような作品です。各章は3組の視点から描かれ、物語が進みます。必ずしも時系列順ではなかったり、視点者の回想として過去に遡ったりするため、起きている事実以上に複雑な印象を感じ、感情移入しずらかったです。
再読で、より面白さを感じると思います。
テレビドラマで観た後に読んだので、複雑な人間関係を頭の中で整理しながら読めました。それぞれの立場からの『人を想う』ということがよく伝わってきました。自分がどの立場かで、そのときのそれぞれの行動は理解できるような気がして、改めて自分にも思いもよらないような『つながり』があるのかもと思いました。前半は『3人のどの話が今の話とどうつながっているのか?』と少し混乱しますが、後半は先が知りたくて一気に読むことができました。さらに読み終わった後にも何か余韻を残すような感じなので、すっきりするには、再読がオススメです。
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