最後の悠貴くんの姿は幽霊ではなくて・・・
この作品を見はじめてからずっと、未来ちゃんの身の回りの誰かしらは死ぬことになるだろうと思っていましたが、まさかそれが悠貴くんだとは・・・しかも直接の原因はおそらく二次災害。
悠貴くんの死が悔しくて悔しくて、なんとかして助けることはできなかったのか考えてしまいました。
主人公である未来ちゃんの、思春期の女子特有の冷めた応対や相手を見下したような発言、素直になれずにちょっとしたことでキレるところがリアルで自分の子供のころを見ているような気分になりました。それゆえイライラする場面も多かったです。
悠貴くんが致命傷を負ったのが東京タワー崩壊時のガレキによる可能性が高く、そもそもの原因が未来ちゃんがキレたことによる姉弟ケンカというのがなんとも・・・あのケンカをしていなければと思うとすごく後味悪くて、ずーっとモヤモヤしてしまいました。
「親や兄弟を普段から大事にしないと、こんな形で後悔することもあるよ」というメッセージが込められているのかな。
未来ちゃんも「私のせいで・・・ケンカなんかしたから」みたいなこと言っていましたね。
それにしてもあの大変な状況で献身的に姉弟を助けてくれた真理さんの存在は、見ていてとっても心強かったですね。
倫理的で正義感も母性も強く、しかも美人、おまけに巨乳です。女の私でも惚れてしまいそう(笑)
でも明らかに具合が悪そうな悠貴くんを歩かせて、ゲロまで吐いているのにすぐに医者に見せに行こうとはしなかったんですよね。(もちろん連れて行ってもなかなか診てはもらえないでしょうし、意識もあって本人が大丈夫って言ってたこともありますけど・・・)
でも真理さんほどしっかりした人ならもっと早く危険に気付いてほしかったです。それで悠貴くんを診療所に連れて行って、何度診察を頼んでも断られ、泣く泣く様子を見ているうちに手遅れに・・・みたいな展開なら悠貴くんの死もまだ納得できたのですが。
予期せず命が蝕まれていく可能性もある。それほど二次災害は恐ろしい、甘く見てはいけないものなんだということですね。
最後の方では、死んだ悠貴くんが幽霊として出てきてずっと普通に会話してますよね?
震災のリアリティとは裏腹に急にファンタジーっぽくなってちょっと冷めたんですけど、見終わって時間が経った今は少し考え方が変わりました。あの悠貴くんの姿は幽霊ではなく、未来ちゃんだけが見ていた幻だと思えてきたんです。
自分の家族の死を目の当たりにして混乱している気持ち、弟にずっとつらく当たってきた自分を悔いる気持ち、弟の死を認められないという気持ち、そんないろんな気持ちが混ざり合って見ていた幻覚のようなものかもしれないと。
そう思ったとき、未来の中学校で一夜を過ごしたときに出会ったおばあさんを思い出しました。あのおばあさんも孫を喪い、同じような気持ちで未来ちゃんと悠貴くんをみていたのかもしれません。そう思うとより切なくて、いたたまれない気持ちになりました。
未来ちゃんもおばあさんも一人きりにはならなかったのが救いでした。でも一人きりになってしまった人もいる。まだまだ辛い思いをしている人はたくさんいる。東日本大震災と重ねて、いろいろなことを考えさせられる作品でした。
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