「恋愛の持つ甘やかさ、残酷さは、人生と相容れない。」
2001年に発行された江国香織による恋愛小説です。2005年には、黒木瞳、岡田准一主演で映画化もされています。
タイトルの言葉は新潮社から発行された文庫本の解説から抜粋したもので、江国香織が映画のクランクイン前に贈ってくれた言葉らしいです。わたしはこの言葉を読んで、すごく腑に落ちた気持ちにさせられたというか、あっさり納得させられてしまったのです。
こちらの小説は、対極的な二組の恋人たちが中心に描かれていますが、共通点があります。それは、登場人物の男の子二人が年上の女性に恋をしていることと、不倫であると言うことです。不倫は世間的にも許されるものではなく糾弾されることが多いもので、私自身も不倫は許せないと言う考えを持っています。それにもかかわらず、この小説にはあまり不快感を感じません。甘くきれいで、これこそが純粋な恋愛なのではないかと思わされるのです。
二組のカップルの内、耕二という大学生の男の子が出てきますが、彼は大学生活も要領よくこなし、周囲にもうまく溶け込む一方で、どこか他人に気を許すことができません。いつも警戒心を持ち、周囲にどう思われるかを気にしています。そして、普通の成功した人生を歩みたいと考えているし、実際に行動しています。しかし不倫関係からはなかなか抜け出せません。それはきっと恋愛に関しては人はうそをつくことができないからだと思いました。恋愛の駆け引きなどは抜きにして、恋に落ち、それに溺れてしまえば、本能に動かされてしまうからです。人生を全うに歩むにはうそは不可欠です。恋愛と人生は相容れないということを、耕二というキャラクターで表現していると思いました。
この小説を読んで、恋とは何なのかということを考えさせられました。私の友人は、登場人物の誰にも共感できないし、不倫も理解できないと言う感想を持っていましたが、私は少し共感できるところもありました。それは、恋に落ちてしまえばもうしょうがないということです。なぜ世の中には恋愛のテーマのものが多く出回っているのか、それは人は恋にうそがつけず、人生をも惑わせてしまう残酷さと魔力があるからだとこの小説は教えてくれました。もちろん私の友人のように不倫ということに嫌悪感を抱く人は多くいるし、人生をまっとうに歩むためにはそちらの考えのほうがいいとも思いますし、もちろん不倫は支持しませんが。
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