2つの愛
大学生の透と人妻の詩史。いわゆる不倫だけれども、詩史が話す1つ1つの言葉によってキラキラと甘く切ないラブストーリー。
透と詩史、透の親友の耕二と不倫相手の喜美子。不倫という恋愛のカテゴリーは同じでも性質の違う2つの恋愛が物語を紡いでいきます。
耕二喜美子は攻撃的で相手を疲労させ、傷つけるけれども相手を求めずにはいられない愛。
透と詩史は穏やかだけれども詩史の口から発せられる正直で、残酷な甘い言葉に透は翻弄され、静かに追い詰められていく。
2人の女はタイプは正反対だが、共に奔放だ。
詩史は精神が、喜美子は性に対して。
耕二と喜美子が加速的に互いの体にのめり込み倒錯していく先には破綻しか見えない。わかっているのにやめられないのは何かしらの中毒症状に似ている。
透と詩史は共に生きていく決断をするが、それは決してハッピーエンドではない。
作中、耕二は言う。「生まれた瞬間には誰も傷ついていない。人間は完璧な無傷で生まれてくるけれどもあとは死ぬまで傷は増える一方だ。」「誰だって傷つくしかないのに傷つくのことに抵抗するんだよな」と。
きっとこれからも透は詩史の無邪気で鋭利な言葉に傷つけられるのであろう。
そして詩史も透の静かで激しい愛に傷つけられるのかもしれない。
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