自分らしくって何?と考えさせられる作品
一見衝撃的なタイトルですが、とてもハートフルで、人間味にあふれた作品です。祖母の死の知らせを受けた少女が、以前不登校になったときにイギリス人である祖母の元ですごした時間を振り返るという設定のお話です。 祖母は田舎で、畑を作り、鶏を飼い、自然とともに暮らしている人なのですが、学校生活になじめなかった少女に、都会のあくせくした暮らしとは違うライフスタイルをごく自然に伝えて生きます。同時に、自分の家系は魔女の家系であることを伝えます。この物語の魔女は、ファンタジーなどに出てくる魔法使いとはイメージが違い、魔法を使ったり、箒で空を飛んだりはしません。草木とともに暮らし、自分の心を制御する力を養い、自分らしく生きていく中で、現代人が遠い昔に忘れてしまった『不思議な力』ともいうべき直観力を取り戻した人のことを指します。その教えに従い、自分で決めた生活リズムを守り、自然に触れ、生活力をつけていく少女。しかし、感受性の鋭い彼女は、最初会った時から不快感を抱いていた近所の男性を嫌悪する気持ちをなかなか制御することができません。そして、そのことで祖母とわだかまりを残したまま、別れることになるのです。そのことを後悔しつつも、次に会った時、『魔女』に一歩でも近づいていようと一生懸命生きる少女。そんな少女に、祖母は死んだ後も、素敵な贈り物を残していく。 少女と祖母の心の交流やみずみずしく描かれる自然は、私たちが忙しい毎日の中で忘れていた何かを思い出させてくれる気がします。人生に疲れた時、日常生活がわずらわしくてたまらなくなった時、ぜひ読んでみてください。自分らしさの意味や生きていくことの意味を考えるヒントをくれる作品になると思います。決して、その意味を教えてくれるのではなく、ヒントをくれる、それがこの作品の一番の良さだと思います。
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