西の魔女が死んだの感想一覧
梨木 香歩による小説「西の魔女が死んだ」についての感想が7件掲載中です。実際に小説を読んだレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
本作品に見る、ケルト思想と宮崎駿との共通点
「不思議」を大事に書いているイギリス留学中に児童文学者であるベティ・モーガン・ボーエンに師事した、という梨木香歩、本作はタイトルに「魔女」とうたっていることもあり、いくつかの不思議が描かれているのだが、それらが漫画やアニメの「魔法少女モノ」のように明確でなく、大事にぼんやりと描かれている。おばあちゃんのおばあちゃんが結婚する前のこと、まいのお気に入りの「場所」での奇妙な声、同じ場所での美しいビジョンなどだ。これらはまいの体験としてはどうとでも取れる。それはスターウォーズの「フォース」やハリーポッターの便利ツールとしての魔法とは明確に違う。生活の中で自然を共有し、自分を律して正しく生きようとするものが感じられるサイン、という程度だ。児童文学として考えても「このように生きて立派な大人になってほしい」という作者の願いが汲み取れる。また、「不思議」がおこるタイミングがまいが実社会の常識、思想、...この感想を読む
綺麗な文章で綴られた小説です。
お婆ちゃんとの思い出がある人なら、読んでいて何処かでキュンとくる瞬間があります。好きな人は好きだと思います。主人公が感じる息苦しさをどう克服していったのか…中学生の子供と親との距離感とか祖母と孫の距離感とかが、とてもリアルで良いです。自分のことは自分で決めるということ、ただそれだけなんですがそれだけで回復していく主人公のことを見守る周りの温かさが素敵な作品です。映画も観ましたが、とても良かったです。映像で観る世界観と小説で読む世界観が同じですごく良かったです。子供が読める年齢になったら、子供にも読ませたい小説です。色んな人の気持ちに触れることのできる良い小説だと思います。
中一の少女まいと、その祖母のふれあいの日々
先に、映画化された方を見ていて、とても美しい映像が多く、好きな映画なので、原作はどうなのだろうと、楽しみに手に取りました。結果、とても忠実に映画化されていたことがわかり、頭の中で、美しい光景が広がり、大変満足のいく作品でした。いつか、セットのある、山梨県の清里高原を訪ねてみたいと思う程に。「群れる事」をしなかったため、いじめの対象になり、学校に行けなくなった、中学一年生の少女、まい。その後、彼女は、母方の祖母の家に約1ヵ月間預けられ…引っ越しをきっかけに、両親の元に戻り、2年後、祖母が死んで、預けられた1ヵ月間を思い出す…というストーリーだけれど、こんな素敵なおばあさんとの生活なら、きっと楽しいだろうなと思いました。ラストも素敵です。きっと、おばあさんは、まいが、ヒメワスレナグサと呼んでいた花を大事にしていたのを知っていて、大事にしてくれていたのだろうと。そんな優しいおばあさんの魂は、...この感想を読む
あまりハマらず
映画化のせいもあってか、かなり話題になっていたので軽い気持ちで手に取った一冊。やさしさが込められたお話だと思うし、丁寧さで細やかな雰囲気に好感は持てたものの、終わり方がどうしても、うーん、、となってしまった。これはやっぱり好みの問題で。自分の人生観と食い違っているせいというか。おばあちゃんは素敵なひとだったし、教えてくれることばはどれもとても大事なことで、主人公にとってとてもいい肥やし(?)になったと思うのだけれど、、それもなんだか個人的にはあまり心に響いて来なかったような気がする。それに加えてあの終わり方。もやもや。タイトルのネーミングセンスは良いなー、と思う。
どの世代でも
映画にもなった梨木香歩の作品。言葉遣いがとても丁寧で、文章も優しく、するっと読めてしまう作品。児童文学寄り、と評されることが多いが、この作品はもしかしたら大人にぜひ読んで欲しい作品かもしれない。主人公のまいと同世代の子供に読んで貰って感想を聞いても、皆うまく言葉にできないでいるからだ。それよりは、『都会のあくせくした暮らし』と『不便だけれど全て自分の手で行い、自分というものを大事にすること』をなんとなく理解できる大人が読んだ方が、衝撃は大きいかもしれない。読んで衝撃を受けた大人は、すぐに子供に勧めたがるが、押し付けてはいけないと思う。それこそ、この作品に出てくる「魔女」に失礼だ。誰だって価値観は違うし、きっかけも違う。それでも、まいのように必要なときにきっかけはやってくる。だからこの本は、そっと購入して本棚にしまい、子供がふと手に取るのを期待すべき本なのだと思う。
おばあちゃんの知恵袋
梨木さんの作品は、ことばの使い方が優しい。児童文学にふさわしい作品だと思う。「魔女修行」は自然の摂理に寄り添い、人間らしい生活を送る修行だった。日が昇れば起床し、日が沈めば就寝する。自分で栽培したものを口にする。人と人とが寄り添って生きる。どれも自然の流れに逆らって生きがちな現代人にとって当たり前のことではない。「登校拒否」をしていた主人公まいが取り戻した元気は、自然の流れによって取り戻したのだと感じる。即効性はないけど、人間に合った療養法だ。自然の摂理に忠実なお年寄り世代は現代を生きる私たちに自然と寄り添うことの大切さを教えてくれる。この作品は「おばあちゃんの知恵袋」の大切さを教えてくれる。
自分らしくって何?と考えさせられる作品
一見衝撃的なタイトルですが、とてもハートフルで、人間味にあふれた作品です。祖母の死の知らせを受けた少女が、以前不登校になったときにイギリス人である祖母の元ですごした時間を振り返るという設定のお話です。祖母は田舎で、畑を作り、鶏を飼い、自然とともに暮らしている人なのですが、学校生活になじめなかった少女に、都会のあくせくした暮らしとは違うライフスタイルをごく自然に伝えて生きます。同時に、自分の家系は魔女の家系であることを伝えます。この物語の魔女は、ファンタジーなどに出てくる魔法使いとはイメージが違い、魔法を使ったり、箒で空を飛んだりはしません。草木とともに暮らし、自分の心を制御する力を養い、自分らしく生きていく中で、現代人が遠い昔に忘れてしまった『不思議な力』ともいうべき直観力を取り戻した人のことを指します。その教えに従い、自分で決めた生活リズムを守り、自然に触れ、生活力をつけていく少女。...この感想を読む