破線のマリスの評価
破線のマリスの感想
野沢尚の江戸川乱歩賞受賞作
1997年、野沢尚の江戸川乱歩賞受賞作です。物語の疾走感、評判がとてもよいのが納得の一冊でした。人気報道番組の編集に備わっている遠藤瑤子が、持ち込まれたネタをガセネタだと気づかずに一人の男の人生を狂わせ、自らも狂気へ進んでいく様、人間の感情描写がキレイに描けていて良かった。ミステリーというよりも、放送業界への問題提起的な要素が強く感じられました。視聴者側の読者には、放送業界の闇の部分が見えて面白い。親子の情や主人公の人生観などを身近な問題として捉えることができ、丁寧に描かれていて読み応えがあり満足。映画化されているので映像でも見たいなあ。野沢氏の他の作品も読んでみようと思います。
報道の怖さを感じた
テレビ局のニュースの編集者が主人公。彼女は映像編集を得意とし、虚偽報道ギリギリの編集を続けていた。ある日、殺人事件に関する一本のテープを受け取り、それを編集し流すが、そのテープ自体が捏造であったことに気づく。報道で被害を被った人物に執拗に追い掛け回され、今度は自身が撮られる側となる。そこから彼女の破綻が始まり、殺人を犯してしまう。だが、彼女を盗撮していた人物は意外な人だった。しっぺ返しをされて、彼女は初めて日々の罪に気づく。マスメディアが真実だと主張するものが、本当の真実だとは限らない。そう理解しているつもりでも、我々は受け取る側としての「選別する努力」を怠りがちである。提供される報道の数が多すぎて吟味する暇もない。一方的に与えられる映像を鵜呑みにして動く様は滑稽だ。報道の恐ろしさ・受け止める側の姿勢を問われているようだ。