陽炎の男の評価
陽炎の男についての評価と各項目の評価分布を表示しています。実際に小説を読んだレビュアーによる評価が2件掲載中です。
各項目の評価分布
陽炎の男の感想
大治郎の独り立ちと三冬の淡い恋
池波正太郎の『剣客商売』シリーズの第3作目です。『剣客商売』は老齢の剣客、秋山小兵衛を中心に、息子の大治郎や、小兵衛を慕う女剣士の三冬たち若者の活躍を描くシリーズです。この3作目では、真面目すぎて世渡り下手の大治郎が、少しずつ小兵衛のもつ清濁併せのむ世渡り術を身につけ、一人前の剣客として独り立ちしていく様子が描かれています。心配しつつも大治郎に任せる小兵衛と『父ならどうするだろう?』と考えながら行動を決める大治郎の姿は、こんな父子関係は理想だろうなあを感じるものがあります。また、この巻では、男装の女剣士である三冬が、淡い恋心を実感するようになるのです。しかも、その相手は大治郎! 大治郎の方はまったく気付いていないところがいかにも彼らしいですが……。2人の恋の行方を楽しみながら読める作品なので、時代小説は苦手な女性でも楽しめるシリーズだと思います。