吉村昭らしい重量感溢れる短編
7つの読み応えのある短編集この「見えない橋」はタイトルにもなっている短編を含み、全部で7つの物語が収められている。その全てが吉村昭らしい重々しさとリアルさ、静かさを湛え、短編とは思えない読み応えのあるものとなっている。収められている物語の中には、吉村昭の自叙伝というか、実際彼自身の身に起こった出来事が緻密に書かれた物語もある。吉村昭自身あとがきで、母のことを書いた唯一の私小説であると書かれているそれは壮絶な出来事で、現実とは思えない凄惨さを感じさせる。吉村昭の作品はいつも重くリアルで、わかりやすいハッピーエンドのものなどないに等しいけれど、なぜかしら強く惹きつけられる。それは、どこまでも現実的ということと、いかにも昔かたぎの誠実な文章で描かれる当時の哀しげで静かな光景などが魅力だからかもしれない。名タイトルの「見えない橋」タイトルにもなっているこの物語は、この作品の一番始めに収められて...この感想を読む
3.53.5
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