まさに味を訪ねたくなる隠れた名作
年季を感じさせる文章の魅力食べ物に関するエッセイは自分が興味あるのでよく読む。東海林さだおは独特の目線とユニークなイラストがいい雰囲気をもったエッセイだし、最近読んだ奥田英朗のは小説とはまた違った文章で彼の個性を強く感じることができるものだった。しかし今回読んだ吉村昭のこの作品は、食事とお酒と旅に、またそれを表現する文章に年季が感じられて、食べ物エッセイによくある軽さではなく重厚な雰囲気があった。吉村昭は作品をひとつ手がけるのに相当な取材をするという。物語の舞台の土地に行き、モデルとなる人々と話し、足で情報を得ることをいとまない人だということを何かの本で読んだ。この「味を訪ねて」は、そのような取材目的で訪れた旅先で出会ったおいしいもの、味のある店などをいかにも大事そうに紹介している。取材だからか本人の性格だからか、いった先々で出会った食べ物や店はことごとく住所録のようなメモにして、次に...この感想を読む
4.04.0
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