片耳の大シカのあらすじ・作品解説
片耳の大シカは、椋鳩十による小学校中学年以上を対象とする児童文学作品である。1977年にポプラ社から出版され、その後も単行本、文庫本などの形態で各社から出版されている。1952年、文部大臣奨励賞を受賞した。 物語の舞台は、鹿児島県の屋久島である。島に住む鹿の群れは、片方の耳を人間に撃たれて失った、大きな一頭の鹿に率いられており、大鹿は人を欺いて群れを逃げおおせさせるほどの高い知能を持っていた。島の猟師たちは、この大鹿こそ森の主であり、大鹿を仕留めた者が最も勇気ある漁師になれると信じていた。 ある冬の日、猟師・吉助は、村の少年7人を連れて大鹿を狩りに行こうとするが、鹿の群れは見つからず、嵐に遭遇してしまう。吉助と少年達は、山腹にあるほら穴に潜って寒さをしのごうとするが、ほら穴の中には鹿の群れがおり、その中にはあの大鹿もいた。吉助は大鹿を撃つことができず、寒さに耐えられなくなった少年達は、鹿の群れの中に潜り込む。人間と鹿は共にほら穴で寒さをしのぎ、翌朝、傷付け合うことなく別れたのだった。
片耳の大シカの評価
片耳の大シカの感想
意外な展開
村のみんなが狙う大物、片耳の大鹿。鹿狩りをする、という設定は現代ではちょっと珍しくてなじみがないかもしれません。でも、この大鹿というキャラクター、なかなかロマンティックな想像力をかき立てるものではあると思います。 お話は別にロマンスとはまったく関係がなく、片耳の大鹿が率いる群れを追いかける猟師たちが遭遇する偶然の出来事について語られているのですが、読んだ後に「やっぱり人間も動物なんだ。」と思えるエピソードです。共通の言葉があるわけでもなく、むしろ仇同士のようなところもあるのに結局は運命共同体になることもあるのだなあと感心してしまいました。結末も温かく、読んで素直によかったといえるお話だと思います。