雨天炎天のあらすじ・作品解説
雨天炎天は、新潮社より刊行された、村上春樹によるロードエッセイ作品である。このロードエッセイ作品は単行本版と文庫版が刊行されており、その後、旧単行本版の新装版となる単行本が、同行した松村映三による未発表写真を新たに多数収録して刊行された。文庫版は写真が少なくなっているが、収録されている写真は旧単行本にも新装版単行本にも掲載されていない。また、一番初めに刊行された単行本は、ギリシャ編とトルコ編の2冊からなるボックスセットであった。 この作品は、作者の村上春樹が、ギリシャ正教の聖地アトスの山中を修道院から修道院へとひたすら歩いて旅をしたギリシャの旅と、謎の「泳ぐ猫」を求めて若葉マークの運転で兵隊と羊と埃がいっぱいのトルコを1周した旅の様子を綴ったエッセイ作品である。 このエッセイは、ギリシャ編もトルコ編も全11話で構成されている。 作者村上春樹のロードエッセイは他にも「辺境・近境」や「もし僕らのことばがウィスキーであったなら」などがある。
雨天炎天の評価
雨天炎天の感想
旅のエッセイが好きです
大学時代に読んだ覚えがありましたが、無くしてしまったので再購入しました。村上春樹さんのギリシャ・トルコの旅行記が好きです。特に興味深かった。ギリシャ・トルコといっても、一般的な観光地ではなく、かなり特殊な地域の旅行記です。薄いのでさっと読めます。この著者の『遠い太鼓』(分厚い)というのも欧州旅行記ですごく面白いです。まるでその地を自分が旅したかのような描写力、ツアーでは行かないような普通の土地の普通の人々の空気感。トルコを車で一周&ギリシャの女人禁制の聖地への旅と、内容はマニアックな旅なのですが、読後はやはり自分も旅に出たくなってしまいました。
本気な紀行文
「雨天炎天」村上春樹さんの紀行文は、旅先の景色や食べ物など目に見えるものだけではなく、空気、旅行先の人々のぬくもりなど見えないものまで伝わってくるようである。旅の醍醐味を気負わずに、淡々と語ってくれているという旅情気分そそられまくりの一冊であったこの紀行文は、とっても読みやすい。すらすらと一晩で読めてしまいます。旅のしかたは、沢木耕太郎みたいな感じ。その国のことを知るために、(時には)無防備に文化の懐まで入っちゃう。その緊張感を、様々なエピソードを通じて臨場感たっぷりに伝えてくれます。だけど、沢木耕太郎と違うのは、本気で紀行文として完成させようとしていないこと。順を追っていないし(憶えていなかった場所は無視しちゃうのかな?)、エッセイの集まりみたいに感じてしまう。
「すばらしい」と言いに行くのが目的ではない、旅の記録
ギリシャ正教の聖地・アトス島と、トルコの辺境を旅した旅行エッセイ。旅行とは何か?という問いがあったとして、「それは知らない土地に行くことです」という答があったとしたら、この本はまるまる一冊かけてその答を提示してくれている。前半の「アトス編」はびっくりするところが多い。場所の状況、設定がまずすごい。完全に女人禁制の、ギリシャ正教の教会だけが存在し、修験者と呼ぶにふさわしい、修行僧たちがいる秘境の島を、日本人がたった二人で巡るのである。劣悪な環境や修業の過酷さ、食生活に至る驚くべき戒律に、筆者は率直に驚き、率直な感想を述べている。「旅」というには過酷な、つぎの修道院に辿り着かなければ野宿、というほとんど罰ゲームのような旅行記が、しかしどんなグルマンな旅行記より、そそるものを湛えている。後半の「トルコ編」もすさまじい。国境付近で兵士に機関銃を向けられながら、将校と写真を撮ったりしてる。わざわ...この感想を読む