「すばらしい」と言いに行くのが目的ではない、旅の記録 - 雨天炎天の感想

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雨天炎天

4.504.50
文章力
4.38
ストーリー
3.75
キャラクター
3.88
設定
4.13
演出
4.25
感想数
4
読んだ人
4

「すばらしい」と言いに行くのが目的ではない、旅の記録

5.05.0
文章力
5.0
ストーリー
4.0
キャラクター
4.0
設定
5.0
演出
5.0

ギリシャ正教の聖地・アトス島と、トルコの辺境を旅した旅行エッセイ。 旅行とは何か?という問いがあったとして、「それは知らない土地に行くことです」という答があったとしたら、この本はまるまる一冊かけてその答を提示してくれている。 前半の「アトス編」はびっくりするところが多い。 場所の状況、設定がまずすごい。完全に女人禁制の、ギリシャ正教の教会だけが存在し、修験者と呼ぶにふさわしい、修行僧たちがいる秘境の島を、日本人がたった二人で巡るのである。 劣悪な環境や修業の過酷さ、食生活に至る驚くべき戒律に、筆者は率直に驚き、率直な感想を述べている。 「旅」というには過酷な、つぎの修道院に辿り着かなければ野宿、というほとんど罰ゲームのような旅行記が、しかしどんなグルマンな旅行記より、そそるものを湛えている。 後半の「トルコ編」もすさまじい。 国境付近で兵士に機関銃を向けられながら、将校と写真を撮ったりしてる。 わざわざそんなところに好きこのんで行って、物見遊山かと揶揄されてしまえばそうかもしれない。 けれど、民族を訪ねてとか、大自然を追って、なんて大義名分がないだけ、そらぞらしさを感じなくて、私には好感が持てた。 筆者は「すばらしい」と言いに行っているわけではないのだ。 興味があった、だから行った、というシンプルな動機と感想が、かえって読む者の心を、読書中まちがいなく旅に赴かせる力があると思う。

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