地獄変の評価
地獄変についての評価と各項目の評価分布を表示しています。実際に小説を読んだレビュアーによる評価が1件掲載中です。
各項目の評価分布
地獄変の感想
芸術を追求した狂気
本作は芥川の代表的な作品ではありますが、芸道を追求する男と俗世間の感覚のズレとそこから物語のモチーフに結実した狂気めいたものが、永遠に読者に突きつけるものを感じさせます。絵仏師の主人公はモデルとするものを見て仕上げるのが常であったのですが、「地獄」をテーマとした屏風を描くことを命じられ、それにまつわって自分の愛娘が関わってきます。芸術を追求する上で、完璧を望むあまり狂ったような行為にまで手を染める芸術家は現代にもよくあります。また自分の作品の完成を家族や自らの平和や幸福を投げ打ってまで目指すのも時折ある話です。しかし本作ほどに物語として凄まじい形でそれを昇華させた一作はなかなかに見当たらないでしょう。