孤島の鬼のあらすじ・作品解説
孤島の鬼は江戸川乱歩の書いた長編小説で、雑誌の朝日に昭和4年1月から5年2月までに連載された後、改造社から刊行された。探偵役でお馴染みの明智小五郎は出てこない。 冒頭で主人公夫妻の様子が主人公の口述で始まり、どのような経緯で主人公が白髪になり、妻にひどい傷跡が残っているのかを回想する形で話が進んでいく。 主人公のかつての恋人が殺され、主人公に恋心を持っている先輩の男に疑いを持つが否定される。密室の殺人や、逆に周りに人がいる状況での殺人が続き、先輩は自分の父が怪しいと考え、主人公と一緒に生まれ故郷の島に向かい、恐ろしい光景を目にするというように話が進んでいく。 推理小説としては、殺人のトリックに意外性があり高く評価されている。怪奇小説のような特徴もあり、主人公、恋人、先輩の男の三角関係が絡みあい、陰獣をはじめとした、江戸川乱歩特有のようなどろどろした雰囲気をうまく表現されている。改造された人間達の描写が、真犯人の残忍さと罪深さを増している。
孤島の鬼の評価
孤島の鬼の感想
秀逸
「桃太郎?」と、このタイトルを見たときに思いました。笑皆さんは、このタイトルを見たときどう感じましたか?タイトルは本にとってかなり重要です。そして、本の上部にそのタイトルが書かれていたなら、なおさら重要です。人間は上から下に目線が動き、その表紙に興味がそそられれば、次に文字を読みます。この作品タイトル「孤島の鬼」は表紙の絵とタイトルは秀逸でインパクトは抜群です。しかも、内容はただの推理小説で終わることなく、不気味な描写の一面も持ち合わしています。内容も秀逸。同性愛が出てくることも評価の一つです。これがこの小説の肝の部分と言えます。オススメです。
仰天の真相とグロテスク
乱歩の小説は時に陰惨でエログロの極致とも言える題材を取り扱っていますが、本作はその中でも飛び抜けてその要素が強いです。それでいながらミステリ的な面白さと、純文学にも通じそうなテーマ、そいて破天荒な舞台じかけが仕掛けられています。悪趣味と言いたくなりますが、面白かったです。傑作には間違いありません。婚約者の女性と、主人公に恋する同性愛者の年上の男。それが絡んでおきながら殺人事件が起き、謎を探っていくうちに婚約者の過去が明らかになりますが、その真相が凄まじいレベルのものです。それを追求するために主人公はとある島に渡り、そこで度肝を抜かれるようなものを目にして、また事件の真相にも驚愕の事実を知らされます。現代では放送コードなどに引っかかって完成できないんじゃないかと思われるような作品ですが、そこは一大怪作と言っていい一作です。