夜行観覧車の感想一覧
湊 かなえによる小説「夜行観覧車」についての感想が8件掲載中です。実際に小説を読んだレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
家庭の事情
高級住宅地「ひばりヶ丘」での殺人事件の話。殺人事件がおこった高橋家・家庭崩壊している隣の遠藤家・ひばりヶ丘の品格を守ろうとする小島さと子。これらの家族と取り巻く人々の視点から、事件が語られていく。ミステリーの要素はほとんどなく、事件を軸にして、登場人物が抱えた「家庭内の闇」が描かれている。個人の立場・置かれた状況から事件を見つめ語るという、心理描写とその行動の繋がりをじっくり楽しむ類の小説である。高橋家の残された異母兄弟達は今後を生きるために協力して口裏あわせを行う。子でも知らなかった母と父の関係性・異母兄弟のささやかな確執が丁寧に書かれている。遠藤家では、無理して高級住宅地に住み見栄を張って生きていく母と、中学受験に失敗して母に恨みを持ち暴れる娘の関係が痛々しい。それを知りながら帰宅拒否する父が悲しい。崩壊家庭の典型なのかもしれない。
見守ることの意味。
家族だから甘えてしまって、許せないぐらいのぶつかり合いになることもあって当たり前なんだけど、「ひばりが丘」ではしんどくなってもうたんかなぁ…と思ったり。ドラマが面白くて面白くて、原作も読みたくなって読みました。思春期の子供の心の描写が上手だなぁと思いました。ドラマの後に読んだからか、少し物足りないと感じてしまいました。ドラマでドキドキしたり時には涙したりした感覚が薄い感じで、映像化が向いている作品なのかも?と思ったり。読みやすく、さらりと読めてしまうので暇潰しにはお勧めです。おせっかいな人は意外に他人が心底困ると助けてくれるんかもしれないなぁと思いました。
期待する解決はしないが・・・考えさせられる作品
テレビの続きが気になりすぎて、とうとう小説を買ってしまった派です(笑) 少しずつ歯車が狂い崩壊していく家族の物語というところでしょうか。 とても良い子だった娘が、ひきこもりの家庭内暴力になり、隣は父親が何者かに殺され、殺人事件へと発展していく中での人間模様をえがいた小説です。 すごく暗いし、最後も解決したのかこれ?って感じなんですが、その中でも必死に立ち直りたい、生きたいという気持ちがあらわれてきて、ある意味人間らしい人たちでなんか安心します。 どんなに仲良く見える家族でも、表向きでは何もなさそうな人でも、それぞれみんな何かを抱えていて、どうしようもできない中で生きてる。 そして、どんなに殺したくなるような娘でも、家族で血のつながりがあって、それは簡単にはきれない。 人間て複雑で弱いけど愛すべき存在だなって、なんかこの小説をよんでいると感じてくるのです。
事件に関わった人物たちやその惨状がとても生々しく伝わってくる作品
事件の真相解明が中心になるのではなく、それに関わった人々の複雑怪奇な人間模様が生々しくも巧みに描かれている作品。被害者家族・その隣人・そのまた隣人とそれぞれがそれぞれの視点で感情をむき出しにして語っているので、人間の醜い部分弱い部分影の部分がありありと描き出され、まるでその人物の立場でその惨状に対峙している感覚に陥る。それぞれの主張が人間味を帯び生々しいからこそその人物の身勝手さや汚さに嫌悪感を抱くこともあるが、逆にとても共感し同情してしまうこともある。そんなふうに読み進めているうち、それぞれの主張や行動や真実が絡み合い噛みあって事件の真相がじわじわと明るみになっていく。大変読みごたえがあった。結末がキレイにまとめられるのではなくああいうリアルな終わり方になったのも個人的にはとても共感できた。
人間関係。
高級住宅地に住むからこその近所づきあいの仕方や人の嫌な部分がとても感じ取れました。主人公一家はふつうのどこにでもある家族であったのにひばりが丘に引っ越してきたことで家族内の何かが壊れ始めます。その様子はとても現実的で、胸の締め付けられる思いでした。家族内のことだけでなく、本当に人間が人間であれば考えたり思ったりすることがこの小説では書かれてあり、自分を少し見直したりしました。自分の子供が大事だからこそ起きたこの事件。溺愛することも少し怖いと思いましたし、愛されていない、と子供が親に思うのも悲しいことだと考えました。人を思う気持ちはとても大事なものであり、この小説内に出てきた登場人物たちが幸せであればいいと思います。
彼はなぜ逃げる続けるのか
湊かなえの作品が好きでいくつか本を読みました。その中で最近ドラマ化したのが夜行観覧者です。高級住宅街「ひばりヶ丘」に家を建てて引っ越してきた遠藤家。しかし、昔ながらの高級住宅街にやってきたよそ者として高橋家は目をつけられてしまいます。そんなときに優しく助けてくれたのはお向かいの高橋家でした。家族ぐるみの付き合いを続けていた2つの家族・・・その間にある事件をきっかけに亀裂が入っていきます。殺人事件が起きた1つの家族とそれに巻き込まれていくもう一つの家族。犯人は誰でなぜ彼は逃げ続けなくてはいけないのだろう。家族の愛、虐待、いじめ・・・さまざまな問題に引き込まれてしまいました。
一気に読んじゃいました!
ドラマにもなっていた、夜行観覧車。ドラマになる前は知らなかったのですがドラマをみて原作が読んでみたい!!と思い読みました(^_^)vやっぱり、ドラマとはどこか違って小説を読むとドラマでみた動きとかが頭に浮かび一気に読んでいました(笑)最初は犯人が誰なのか必死に自分なりに推理してみたり…しかし登場人物が増えていくと、それぞれの人が怪しい行動をとりすごく楽しく読むことができました!!家庭内の問題をリアルに書いてあって主人公に感心したり同感したりしました。また主人公と親友の関係もとても好きでお互い何も言わないけど信じているんだなぁと思うことができました!そして、主人公の娘にも共感する部分もあり、今の時代の家庭内の問題をリアルに表現していたので親しみをもて読みやすかったです!!ドラマを見た方も見てない方も是非一度読んでみてください!
誰もが嫌な部分を持っている
人の持つ嫌な部分がリアルに描かれているように思いました。登場人物の多くが、どこか他人と自分を比較しながら生きていて、そうすることで満たされたり落ち込んだりしています。その描き方があまりに人間味がありすぎ、読んでいて少し辛く感じました。他人から見れば幸せな家族の中で起きた殺人事件。この物語の面白みは殺人事件の解明ではなく、見栄を気にする人々の描き方にあると思います。また、家族の一方が加害者で一方が被害者という状況についての人々の反応の仕方も上手に描いていると思います。ドラマでもやっていましたが、原作よりも登場人物の良い部分も描かれているので受け入れやすいストーリーになっていた気がします。夏木マリさんの小島さんの役だけは原作よりコワーいオバちゃんになっていましたが…。