男性としての夏目漱石を知りたくなった一作
不条理で美しい夢夢の話ほど、他人に伝えるのが難しいモノはない。語るにせよ、書くにせよ、描くにせよ、だ。何がそんなに恐ろしかったのか、何がそこまで切なかったのか、さっき瞼を開ける寸前まで、あれほど鮮明で生命力に満ちていた不思議な世界、それなのに、その一部さえ、上手く伝えることができない。時に、夢で出会った人物に焦がれるほどの恋さえしてしまうのに。夏目漱石の「夢十夜」を初めて読んだ時、私は感動のあまり拳を握りしめて何度か振った。「Yes!最高!」そんな言葉を胸中で叫んでいたように思う。この物語は、まさに夢だ。不条理で美しい、怪しくて切なくて奇天烈な話ばかり。なのに、何故か自分も、そんな夢を見たことがあったような気さえしてくるから不思議だ。男性を見直すほどの魅力ーー第一夜どの話も素晴らしいが、私は十夜の中でも、第一夜がとびきり好きである。今のところ、この短編を超えるお気に入りには出会っていな...この感想を読む
5.05.0
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