満足いくものなんてそうつくれるものじゃない。妥協して妥協して、自分を殺して作品をつくりあげるんです。
牛島龍彦
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ラヂオの時間は1997年に三谷幸喜監督によって公開された映画で、原作は劇団サンシャインボーイズによる同名タイトルの演劇舞台作品である。なおこの作品は三谷幸喜監督が手がけた最初の映画で、第52回毎日映画コンクール日本映画優秀賞、脚本賞、第22回報知映画賞作品賞、第21回日本アカデミー賞最優秀脚本賞、最優秀助演男優賞、ほか多数を受賞した。 普通の主婦、鈴木みやこが脚本を手がけた熱海を舞台にくりひろげられる平凡な主婦と漁師の恋物語を描いた作品がシナリオコンクールで採用されラジオドラマで使われるところから物語は始まる。しかし生放送で放送される中で脚本が変えられていき辻褄が合わないなど、様々なハプニングが起こり、最終的に自分の書いた脚本とは大きく違う結果となってしまい、鈴木みやこは憤慨し部屋に閉じこもってしまう様子が描かれている。 鈴木みやこ役に鈴木京香、他に唐沢寿明、西村雅彦、戸田恵子、ほか多くの豪華俳優が出演した。
今や日本映画界のコメディ映画の第一人者となった三谷幸喜監督の初監督作品。最近の三谷作品である「有頂天ホテル」や「ステキな金縛り」などと比べるとまだ初監督感が出ていて洗練されていない荒削りな感じは否めないものの、三谷映画好きには間違いなく面白い作品ではないでしょうか。三谷映画全般に共通して言える事ですが、本当に小さい役柄なんかに有名俳優さんが登場していたりして1度ならず2度、3度と見方の楽しみ方があるのではないでしょうか。主演の唐沢寿明さん、鈴木京香さん始め、脇を固めるメンバーもいわゆる三谷作品常連のメンバーばかりで、観る人以前に自分たちが楽しんで演技しているのか伝わってきて観ているほうも楽しくなってしまう作品だと思います。
いかにも三谷幸喜さんらし笑いに溢れている。三谷さんの作品は舞台をそのまま映画にしたようなところがあまり好きではない。映画には映画にしかできない魅力、舞台には舞台にしかできない魅力があるので、どちらの魅力も生かし切れていない様な印象を持ってしまうのだ。けれど結局作品は全部見ているのだから、知らない間に魅力にハマってしまっているということなのか。次々に脚本が変わってストーリーが全然違うところへいってしまうところ、そのために効果音が足りなくなって、伝説の警備員に懇願に行くところ、時々出てくる渡辺謙さんがおもしろいところなど、印象深いシーンはたくさんある。結局好きということなのだろうか。
生放送の緊張感。生放送のラジオドラマを知らない世代だ。だけど、ラジオ自体は大好きで毎日のように聞くラジオ番組がある。だから、生放送特有の時間との勝負の緊迫感や出演者の緊張感が理解できた。ラジオはアナログなメディア媒体であると思うし、本作品中では音響を人の手で行うのだけれど、それもかなりのアナログだ。花火の音は、頭に本を叩きつけてドーンという音を出し、腰を振ってエフェクトをつくり出す。現代では、存在感が薄くなりつつあるアナログな物にこそ本来の感動やドラマが存在するような描き方がされているように思えた。三谷作品ならではの、意固地丸出しの人間劇にもご注目の作品になっている。
よみがな:いとうまんさく
よみがな:うしじまたつひこ
牛島龍彦
主演女優である千本のっこのワガママに端を発して、生放送直前で次々と作家である鈴木みやこの脚本にどんどん変更が加えられていってしまい、ついにはラストシーンまで変更されることになり、自分の作品を台無しにされた鈴木みやこは堪忍袋の緒が切れ、スタジオ内に立てこもってしまう。その時、プロデューサーの牛島龍彦が鈴木みやこにかけた言葉。
伊織万作
ラジオ局「ラジオ弁天」で、一般公募のドラマを生放送することになった。いよいよ本番開始となったのだが、出演者たちのワガママで、放送中に次々と脚本が変更されていく。生放送中なのでやり直しが効かない。急場を凌ぐ為、スタッフは奮闘するが、SEがそろわない。そんな時、今の守衛の伊織が昔、SEだったことを知る。ディレクターの工藤は、守衛の伊織の助けを借り、無事、放送を終了させる。終了後、伊織は工藤にこう言う。