ラヂオの時間の感想一覧
映画「ラヂオの時間」についての感想が7件掲載中です。実際に映画を観たレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
まだ粗削りも観ているほうまで楽しさが伝わる作品
今や日本映画界のコメディ映画の第一人者となった三谷幸喜監督の初監督作品。最近の三谷作品である「有頂天ホテル」や「ステキな金縛り」などと比べるとまだ初監督感が出ていて洗練されていない荒削りな感じは否めないものの、三谷映画好きには間違いなく面白い作品ではないでしょうか。三谷映画全般に共通して言える事ですが、本当に小さい役柄なんかに有名俳優さんが登場していたりして1度ならず2度、3度と見方の楽しみ方があるのではないでしょうか。主演の唐沢寿明さん、鈴木京香さん始め、脇を固めるメンバーもいわゆる三谷作品常連のメンバーばかりで、観る人以前に自分たちが楽しんで演技しているのか伝わってきて観ているほうも楽しくなってしまう作品だと思います。
結局好きな映画
いかにも三谷幸喜さんらし笑いに溢れている。三谷さんの作品は舞台をそのまま映画にしたようなところがあまり好きではない。映画には映画にしかできない魅力、舞台には舞台にしかできない魅力があるので、どちらの魅力も生かし切れていない様な印象を持ってしまうのだ。けれど結局作品は全部見ているのだから、知らない間に魅力にハマってしまっているということなのか。次々に脚本が変わってストーリーが全然違うところへいってしまうところ、そのために効果音が足りなくなって、伝説の警備員に懇願に行くところ、時々出てくる渡辺謙さんがおもしろいところなど、印象深いシーンはたくさんある。結局好きということなのだろうか。
新鮮味があるアナログな世界観
生放送の緊張感。生放送のラジオドラマを知らない世代だ。だけど、ラジオ自体は大好きで毎日のように聞くラジオ番組がある。だから、生放送特有の時間との勝負の緊迫感や出演者の緊張感が理解できた。ラジオはアナログなメディア媒体であると思うし、本作品中では音響を人の手で行うのだけれど、それもかなりのアナログだ。花火の音は、頭に本を叩きつけてドーンという音を出し、腰を振ってエフェクトをつくり出す。現代では、存在感が薄くなりつつあるアナログな物にこそ本来の感動やドラマが存在するような描き方がされているように思えた。三谷作品ならではの、意固地丸出しの人間劇にもご注目の作品になっている。
生放送が始まるよ!
主婦、ラジオドラマ作家になる。夢のような出来事ですよね。プロの声の役者たちが、自分の作品に命を吹き込んでくれる。今まで家の中の世界しか知らないようなもんだったのに、こんなキラキラした世界に縁が繋がるだなんて、ほんと人生ってわからない!でもまあ現実の現実っぷりたるや。一人の素人の夢の詰まった脚本を、役者達ったらもう好っきなように、アレンジしてしまいます。スタジオで繰り広げられる、激しい個性のぶつかり合い。個性というか。プライドというか。その他諸事情も絡み、セリフというセリフが大変なことに。一体この何の変哲もなかったラブストーリーのはずだったものはどこへ向かうのか…が注目の映画です。一本観終えたら、何とも言えない達成感に浸れるはず。ほぼワンシチュエーション、生放送ラジオドラマという設定なのも重要なポイントです。三谷映画が好きなのですが、ものすごいセットとかじゃない面白さがここにある! とオス...この感想を読む
三谷幸喜の笑い
厳しい見方をすると、三谷幸喜の初監督作品という事もあり、映画という装置を十分に生かし切れていない感じは残りますけれど、それでも元々の舞台台本が良く出来ているので、十分に楽しめると思います。ただ三谷幸喜の独特のセンスでの話の細かい発展の仕方に関しては、好き嫌いが分かれる部分もあるかも知れません。たとえば「律子」という役名が唐突に「メリージェーン」という役名に変わってしまうときの可笑しさに関しても「メリージェーン」という言葉の選び方の三谷一流のセンスがあるのですが、中には「センスがちょっと違う」と感じてしまうかもしれません。舞台などで観客を弾き込む場合には「違い」が世界観となるのですが、スクリーンあるいはテレビという一枚隔てた所の観客にとっては、好き嫌いが出てしまう所になっていると思います。
三谷幸喜っぽいコメディ
三谷幸喜の初監督作品です。三谷幸喜らしい痛快で店舗の良いコメディです。舞台用の脚本を映画化したという作品なので、舞台っぽい演出がまたテンポの良さにあらわれていると思います。主役の唐沢寿明はじめ、演じている俳優がうまくその滑稽さを出していると思います。きっとテレビやラジオでは、こういうことがしょっちゅうあってその体験をもとに作ったのだろうな、と思っていたら、実際三谷幸喜が書いたドラマ「振り返れば奴がいる」で勝手に脚本が書きなおされていたという経験をもとにして作ったみたいです。いわゆるギョウカイ人の滑稽さがよく描かれていてかなり笑えます。痛快に笑ってみれる作品です。
三谷的密室コメディ、此処に在り
脚本家の三谷氏が監督も務めた本作品は、もともとが舞台演劇。となれば、映像の迫力というよりもセリフの力が面白さを左右する。しかも作品の題材は「ラヂオ番組(あえてこう書く)」である。つまり劇場の大スクリーンにて上映される映画でありながら、映像自体は何とも地味になってしまうのだ。こうなると、あとは強烈なキャラクターたちがストーリーをグイグイ引っ張っていくような形にならざるを得ない。しかし作中劇の破天荒な展開も、役者のワガママに振り回される制作陣も、ラヂオだからこそゆるされる音の表現も、いわば聴取者が舞台裏を覗き込めたら・・・という一度は抱いた願望を形を変えて面白おかしく表現している。三谷脚本の醍醐味が思う存分発揮された、密室コメディの決定版といってよいだろう。