深川芸者殺人事件の評価
深川芸者殺人事件の感想
うつろうものは人の心
最初から怪談じみて少し怖かったけれど、いつも通りの洞察力と推理が冴え渡ります。南町奉行根岸根岸肥前守鎮衛の若かりし頃の意外な姿が浮き上がります。無鉄砲で心変わりしやすかった若者。その若者を待ち続けた女。約束とは儚いもの。人の心は残念ながら変わり、気持ちも記憶も薄らいでいきます。そのスピードがお互いに同じであれば良いけれど、差が有ればそこに悲劇が生まれます。亡くなった根岸の妻はちょくちょく幽霊として姿を現して言葉を交わしそれが根岸にとっては当たり前になっています。それだけお互いに愛し合っていたのでしょう。けれど現在の根岸には芸者の恋人がいます。・・・その点も私にはちょっと腑に落ちませんが・・・・