あやしの評価
あやしの感想
深みがある怪奇物語。
江戸時代を舞台にした怪奇物語「あやし」。じっとりとした恐ろしさ満載の中に切なさも。夜に読むと背筋がぞくりとしてしまう一冊。「居眠り心中」、「影牢」、「布団部屋」、「梅の雨降る」、「安達家の鬼」、「女の首」、「時雨鬼」、「灰神楽」、「蜆塚」の九編が収録されています。情感たっぷりの語りかけるような文体で、それぞれのお話に不思議な余韻が残りました。中でも「安達家の鬼」が一番印象深いお話でした。義母と心を通わせている鬼。義母は鬼に守られながら一代で商いをなした。「良いことと悪いことは、いつも背中合わせ・・幸せと不幸は、表と裏だからね」辛いことばかりでは、逆に鬼も見えないのかもしれない・・」最期がドラマティックで好きです。
物の怪の比ではない怖さ。
宮部みゆきさんの時代物の短編9作品。「あやし」という名前なのだから、もちろん怖いのだろうと思って手には取ってみたものの、本当に怖かった!普通、怖いものというと幽霊とか物の怪とかを思い浮かべるけどこの作品たちから感じたものは、「生きた人間はそれ以上に怖い」ということだった。どの作品も怖かったけれど、中でも「女の首」は背筋がゾクリとした。こんなにも長い間、しかも絵の中で人の怨念というのは育てられるのだというのが恐ろしかった。語りが江戸時代の人の口調なので淡々とした中にゾクリとする凄みが感じられて話の怖さに拍車がかかる。怖いけれど読んでしまう、そんな本でした。