切なく、そして衝撃
同じアパートに住む隣の母子が、離婚したろくでなしの亭主を誤って殺してしまったことから、物語は動き出します。隣人であり母に惚れている数学者の石神が、二人をかばうためにその天才的な頭脳でもって隠ぺいを図り、彼のかつての友人の物理学者のガリレオが真相を暴くために調査を開始します。 かばおうとした母には別の恋人ができようとするとストーカー的な偏執を見せる石神、揺れ動く母と子の愛憎。すべての物語が結末に向かって見事に収斂していきます。 トリックに関しては手練れの作者らしく、日常の描写の中に読者がだまされてしまう仕掛けが潜められています。そして本作の一番の魅力は、それほどトリッキーな罠が仕掛けられていながら、登場人物や全体の物語性が巧みな所です。薄っぺらいミステリーを想像すると勘違いします。 血の通った熱い心を持つ人間が、同じように悩み、苦しみ、そして行動し、結末を迎える。 明らかになった衝撃の真相とともに、読者はタイトルの真の意味と物語の展開を理解します。
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