容疑者Xの献身の感想一覧
東野 圭吾による小説「容疑者Xの献身」についての感想が12件掲載中です。実際に小説を読んだレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
想いの形
私が誰かを殺してしまったとき、誰かがそれを隠蔽してくれるといったとしたら?もしくは誰かがその罪をかわりにかぶってくれるといったら?その相手が、自分の肉親でもなんでもない男だったとして・・・・。そう考えたとき、容疑者Xの献身ぶりよりも真犯人の身勝手さ・浅はかさのほうにより強く意識が行きました。フィクションだからと言ってしまえばそれまでですが、そんな申し出を受けてしまえるのが納得がいかないです。それをネタに一生強請られたり、罪悪感を抱えて生きていく方がよっぽど辛いと想像するのに難くはありません。愛することに不器用で、こんな表現しか出来なかった男。悲しいですね。
哀しい殺人
湯川教授の登場するシリーズの初の長編作品。主人公は高校数学教師で、湯川の学生時代の友人。母子で暮らす隣人が犯した殺人事件を隠蔽するために、自らも別の殺人を犯して彼女達を庇おうとする。湯川が友人の犯した罪を暴く。どうしてそこまでして・・・と、悲しくなる犯罪である。生きる希望を失っていた主人公が、微かな生きる希望を与えてくれた隣人のために殺人を犯す理由が物悲しい。加害者に同情の余地を与えるような物語は好きではないのだが、理由や言動どれもがとにかく悲しく、涙が出る。虚無感というのだろうか。小説・映画どちらもとても面白く、それぞれ楽しむことができる。好きな作品だ。
献身的な愛
ガリレオシリーズの中の一作ではあるが、物理学者湯川の側面よりも、一人の人間としての湯川の側面が表に出てくる今作。トリックに科学の一面がないわけではないが、人を思う気持ちがここまで大きなものになり得るのか、と感動すら覚える一作。他人を助けるために、ここまでのことができるのだろか、しかも見返りもなしに……。読後は、ラストのどんでん返しも驚きだが、この内面の問いの方が大きくなっていく。天才物理学者vs天才数学者、と煽りがつくことの多い本作だが、帝都大学(立ち位置は東大か)と高校の教師、スマートな湯川とだるまの石神など、ポジションもスタイルも、対比されて描かれている。映画化されるとき、堤真一が石神と聞いて、かっこよすぎる…と思ったが、これがまた、凄まじい好演で、ぴったりなのだ。少し老けた感じを出すために、前髪を抜いて額を広くしたという。映画もおすすめできる、傑作です。この感想を読む
やっぱり面白い!
ガリレオシリーズの1作ですが、ガリレオシリーズの科学的な謎解きとは一風変わり、人間関係に重点が置かれているように感じる作品です。ガリレオとその友人(石神)の頭脳戦が描かれていますが、その中にあるお互いの気持ち、願いなど、いろんな思惑が交差し、その情景が目に浮かぶような作品でした。推理小説ではあるものの、ほかの東野さんの作品と比べても、若干毛色の違った推理小説だと思います。(本格推理小説か?という議論もあったそうです)有名ではありますが、映画化もされており、こちらも各キャストがいい味を出しています。どちらを見ても、両方見ても楽しめる作品だと思います。
頭をフル活動。
初めはなんとなく手にとったのが始まりで東野圭吾さんの作品はわかりやすい物語ではなく、どちらかと言うと頭を使って自分の中で納得するまで読む、といった少し疲れるイメージがありますので、何も考えず読みすすめていけばやはり引っかかり、また読み返して。という風にしているうちに読み終えてしまいました。知らない間にハマってしまっていたようで、最初の時点でこれがあの有名なガリレオシリーズとも気づかなかったのですが読み終えるとすんなりとそれが入ってき、とても満足感がありました。難しくはありますが、読んでいて夢中になれる作品です。東野圭吾さんのシリーズが好きな人も読んだことのない人も是非手にとって読んでみてください。
さすが東野圭吾
東野作品は結構読みましたが、この本は私の中でベスト3に入るくらい気にいっています。文章力があるのはもちろんですが、科学的な要素を盛り込みつつ、恋愛小説としても十分泣かせる部分があり、パーフェクトでした。ちょっと気になったのが、主人公がホームレスの命を軽視していることかな。とっても魅力的な主人公なだけに、その展開にはちょっとだけ残念な気持ちになりました。でも、裏を返せばそれだけ盲目になっていたということでしょう。愛情は、人を変える力があるんだなぁと、改めて感じさせてくれました。映像化もされていますが、それも素晴らしい。原作の良さをきちんと生かせた内容となっていますね。
面白かった
面白かったです!東野圭吾さんの王道な面白さ。人間くさい感じがたまらなくいい!映画も見ましたが面白かった!頭のよい人がこうなるということを美しく表現されてて読みやすかったですね。個人的には数学とかなんの興味もないんですけど人間くさいので興味をもてました。男の人だけでなく女の人も優しく美しく描かれている。頭が良くても所詮好きな女のためには手を尽くすわけですね、頭が良ければなおさら。まあ現実ではあっちゃいけないですけど・・・・・・だからこそリアルで面白い。犯罪を犯してまで愛を貫こうとするなんてありえないくらいかっこいいですよね。映画面白かったんで見られることをおすすめしますよ!!
切なく、そして衝撃
同じアパートに住む隣の母子が、離婚したろくでなしの亭主を誤って殺してしまったことから、物語は動き出します。隣人であり母に惚れている数学者の石神が、二人をかばうためにその天才的な頭脳でもって隠ぺいを図り、彼のかつての友人の物理学者のガリレオが真相を暴くために調査を開始します。かばおうとした母には別の恋人ができようとするとストーカー的な偏執を見せる石神、揺れ動く母と子の愛憎。すべての物語が結末に向かって見事に収斂していきます。トリックに関しては手練れの作者らしく、日常の描写の中に読者がだまされてしまう仕掛けが潜められています。そして本作の一番の魅力は、それほどトリッキーな罠が仕掛けられていながら、登場人物や全体の物語性が巧みな所です。薄っぺらいミステリーを想像すると勘違いします。血の通った熱い心を持つ人間が、同じように悩み、苦しみ、そして行動し、結末を迎える。明らかになった衝撃の真相ととも...この感想を読む
好きな人のために
映画化もされた容疑者Xの献身はわたしのだいすきな作品のひとつです。どんな難事件も科学で立証し解決へ導いてくれる変人ガリレオの異名をもつ物理学者の湯川先生。犯人が気になるのではなくなぜこのように殺人が起きたのかこの世にあり得ないことなどないと珍事件を全て科学で立証していくのだ。。この作品では殺人には湯川先生の親友が関わっていた。彼は数学者であり、愛する人が起こしてしまった殺人の犯人が愛する人ではなく自分にすり替わるように偽造していくのだ。湯川先生はこの難問にどう立ち向かっていくのか親友が犯罪に関わっていると知った時なにを思うのかハラハラする展開に引き込まれる作品である。
何度も読み返したくなる作品
湯川准教授が活躍するお馴染みのガリレオシリーズの一作品です。湯川准教授とかつて天才数学者であった高校の先生である石神との対決が物語の軸です。私はガリレオシリーズは全作品読んでいますが、その中でもトップ3に入るくらいこの作品が好きです。石神の緻密で大胆なトリックもこの作品の魅力ですが、物語自体がしっかりしているのでトリックが判明した2度目以降でも十分に楽しめるはずです。石神が好意を抱いている女性とその娘との関係、かつて同期であった湯川との関係、揺れ動く石神の感情表現が見事に表現されています。この作品は映画化もされていますが、石神のキャラクターが少し原作と違っているので、映画しか見たことがない方も新鮮に楽しめると思います。
ミステリランキングでも1位を獲得も納得
直木賞受賞作家である東野圭吾の作品です。様々なミステリランキングでも1位を獲得するほどの人気作品。東野作品の中でも最高傑作だと私は思います。夫婦関係のこじれから人を殺してしまい…といった内容ですが、これは是非読んで欲しいので詳しくは書きません。作品の根本にあるのは、深い激しい愛情です。それをメインにしているので、事件のトリックとしては簡単なものになっていますが、感嘆に値するものであるのも確かです。真面目な推理小説というよりは、映画にもなっていることからわかるようにエンターテインメント色が強いものですので、気負わずに読むことが出来るのではないでしょうか。
意外な展開に感じる人間模様
東野圭吾氏の直木賞受賞作品としても有名ですが、なりよりテレビドラマでもお馴染みのガリレオシリーズの方が有名化と思います。この作品は映画にもなっていますが、テレビドラマのファンであれば、まず原作を見ることをおすすめします。物理学者である湯川学が、物理学の観点から事件を解決するのが、このシリーズの醍醐味でもあるのですが、本作品は物理学や科学といった今までのものとは違い、計算された完全犯罪であるものの、人間ドラマを中心とした作品になっております。結末は書きませんが、クライマックスにかけて意外な展開に最後の最後まで引き込まていきます。そのパズルがひとつひとつ計算されており、作者である東野圭吾氏の凄さを感じることができます。ひとつ言うと、最後はもう少し引っ張って貰えれば、もっと余韻に浸れたと思いました。しかし多くの方におススメできる作品です。