禁断の魔術の評価
禁断の魔術の感想
人気シリーズのノリで手に取るも、読後は考えさせられた一作
ある意味、予想を裏切られた作品「禁断の魔術」は、三百ページに満たないやや短めの長編だ。発売当時、人気のガリレオシリーズの最新刊ということもあり、気楽な気持ちで私は読み始めた。だが、ドラマのイメージのように、難解な謎を主人公である科学者が鮮やかに解いてみせ、一件落着、気分スッキリーーという期待はある意味裏切られてしまった。予想以上に人物描写が複雑だったのだ。出てくるキャラクターは、このページ数で描ききれるのだろうか、と読者ながらに思えるほど年代も主義もバラバラで、しかも説得力ある動機を抱えている。さらに、それを見つめる主人公、湯川のスタンスは、極めて個人的思考によるものであり、一般的な善悪とは一線を画しているのだ。実際にこんな人物が身近にいたら、賛否両論を巻き起こすことは必至だろう。だが、その考え方にも一貫性があり、湯川博士という人物なら、さもありなんと感じさせる。犯罪と正義のグレーゾー...この感想を読む
技術は使う人次第
以前TVドラマで観た話も含まれていますが、やはり本とドラマでは違う部分もあり、面白くてすぐに読み終わりました。科学や化学の進歩はめざましく、それに伴い武器や犯罪も多様化かつ巧妙で時に残忍さも増しているように思います。素晴らしい力があっても、それを使う人次第ということですよね。本書の中でも出てくる言葉です。一見とてもクールで人のことには関心を持たない湯川さんですが、実は冷たい人間ではないということがわかります。ガリレオは変人ではなく、ただたんに学問的追求をせずにはいられず、それが深いために周りの人間との交流が減ってしまっただけに思います。