優しいのになぜか切なく感じる作品 - 手ぶくろを買いにの感想

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手ぶくろを買いに

4.724.72
文章力
4.71
ストーリー
4.86
キャラクター
4.57
設定
4.71
演出
4.71
感想数
9
読んだ人
20

優しいのになぜか切なく感じる作品

4.54.5
文章力
5.0
ストーリー
4.5
キャラクター
4.5
設定
4.5
演出
4.5

新美南吉さんの童話はどれもけっこう好きなのですが、『ごんぎつね』に続くNo2ぐらいに位置する作品です。子どものためを思い、人間の怖さをせつせつと説く母狐、相手が狐だと知り疑いながらもお金が本物だと確かめ黙って手袋を売る商人、人間は怖い人ばかりじゃないと無邪気に思う子狐。キャラクターたちはみんながみんな、最終的には相手のことを思いやった行動をするという優しさにあふれた作品なのに、大人になって読むと、なぜか切なさを感じてしまいます。それはたぶん、純粋に相手のことを信じているのは子狐だけだと気づいてしまうからでしょう。母狐は人間の怖さを身をもって知っていて、狐だとばれないことが信じてもらえる条件だと考え、商人はお金が本物であるかどうかが相手を信じる基準であり、疑念や種の違うものとは相いれないものという諦めを心の奥底に持っているのです。もちろん、現実社会では、無条件に相手を信じることは危険極まりないことです。だから、母狐や商人の態度が生きる上で当然のことだとわかってはいるのです。それでも、なぜだか、子どもの特権のような無条件の信頼をなくしてしまったことを切なく感じてしまう作品です。特に、このシリーズは、挿絵も素敵なので、『ごんぎつね』とともにお勧めです。

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