最後のひと葉のあらすじ・作品解説
最後のひと葉は、19世紀後半から20世紀初頭にかけて活躍したアメリカの作家オー・ヘンリーの短編小説。病気で希望を失った若い画家の女性と、長年酒びたりの生活を続けてきた老画家のふれあいを描く。 芸術家が集まる古びたアパートにジョンジーとスーは住んでいた。二人とも画家を目指し、貧しいながらも製作活動を続けているのだが、ジョンジーは肺炎を患ってから生きる希望を失ってしまう。彼女のベッドからは窓の外に壁に這う枯れかけたツタの葉が見えたが、ジョンジーは友人のスーに、あのすべての葉が落ちたら自分も死ぬだろうと言い始める。 このアパートには絵を描かずに酒びたりの生活を続ける老画家、ベアマンがいた。彼の口癖は、いつかオレは傑作を描いてみせる、というものだった。そんな彼はジョンジーが病気を患い、生きる希望を枯れかけたツタの葉に見出していることを知る。その話を聞いてベアマンは彼女を嘲弄する。そしてその夜から激しい風雨が吹き始めるのだが、翌朝ジョンジーとスーは予想外のものを窓の外に見るのだった。
最後のひと葉の評価
最後のひと葉の感想
誰かのために生きるって幸せなこと
決して長い話でもないし、驚くようなどんでん返しがあるわけでもないし、奇想天外な展開があるわけでもないのに、忘れることのできない何かがあるお話です。若い画家が不治の病にかかり、ベッドわきの窓から外の壁にはっている蔦を眺めては、あの蔦の最後の一枚が落ちたら自分は死ぬだろうと言っています。事実、葉が散っていくごとに、容体は悪くなっていき、最後の1枚の葉が残されるだけとなります。そんな時に、よりによって嵐がやってきて、誰もが絶望的な気持ちで窓を開けると、そこにはなんと1枚の葉がしっかり残っているのです。それは実は、傑作を描くことができずどこか人生に投げやりだった老画家が、彼女のために嵐の中で描き上げたもので、彼はその時の無理がたたってなくなり、一方女性は生きる気力を取り戻します。それまで投げやりだった老人の思いやりが奇跡を起こし、老人は幸せそうに死んでいくのです。きっと奇跡は老人にも起きていた...この感想を読む
生きる気力を与えた最高の絵
同じ部屋に住む画家の2人の女性の内の1人が病気になり、壁に這う枯れた蔦の葉の最後の1枚が散ったら自分も死ぬと言い出します。生きる気力を失っていた彼女に、再びそれを取り戻させたのは、ある老人画家が描いた蔦の葉の絵でした。女性は元気になりますが、絵を描いた老人は亡くなってしまいます。それまで傑作と呼べるほどの作品を描いたことがなかった老人が、たった一枚の葉の絵で、人の命を救った奇跡の話です。オー・ヘンリーの短編は人間の自己犠牲による奇跡の話が多く、老若男女国籍問わず愛される作品が多いです。短い中に、きらりと光る話が詰め込まれていて、何度も読み返したくなる作品です。