りかさんの優しさと温かさ、そして温もり
言葉たちは私の励みになる反面、投げつけられた心ない言葉に触れ傷つくこともある。
人間関係って、難しいなーと思うし、特に気持ちや言葉は気を付けて伝えないといけない気がする。でもコントロールの仕方をよく分からないままだからか、正解がないからか、つまずく。
そんな時に私が思い出すのは梨木香歩さんの『りかさん』のこんなセリフです。
「どんな『差』や違いでも、なんて、かわいい、ってまず思うのさ」
かわいいと思うことは相手を認めることだと思う。認めることによって、見えてくるものは変わってくる。それでも、どうしてもかわいいと思えない時のために、心の中にいつでも取り出せるような幸せな「かわいい」を温めておこうと思うその考えに感銘を受けました。染みわたり方が深くというよりも広がるようなそんな感覚を覚えました。
「からくりからくさ」の続編で、りかさんと蓉子の出会いから、りかさんが蓉子やおばあちゃんと会話していた頃のストーリーが描かれていて、アビゲイルが背負った悲しい話や、その他の人形の話もどこか心悲しい話が多かった。けれど、おばあちゃんが孫の蓉子に対して変に子供扱いしてなくて、ちゃんと一個人として対話していてそのやりとりが素敵だなあと思いました。蓉子が桜の老木の供養をする為に、初めて染めをする場面もその時の台詞も、この後の蓉子の人格の核となっていて、読んでいるこちらまでいい風が吹いてるような気持ちになれますね。
「植物のときは、媒染をかけてようやく色を出すだろう。頼んで素性を話して貰うように。そうすると、どうしても、アクが出るんだ。自分を出そうとするとアクが出る、それは仕方がないんだよ。だから植物染料はどんな色でも少し、悲しげだ。少し、灰色が入っているんだ」
どんなものだって灰色のところはある。そんな言葉に私は、心が優しい紅色に染まった気持ちになれた。
道徳的で、ちょっと生々しくて、穏やかな文字。
りかさんと蓉子とおばあちゃんのやり取りの中には優しさ、温もり、温かさがあり、よい物語だなと思いました。
人形や草木の物言わぬ歴史に耳を傾け声を聴こうとする著者の物語が個人的には大好きです。
※「からくりからくさ」から読むのがいいですね。その後に「りかさん」を読むと、複雑な女性同士の感情に触れることになり、なおよいです。
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