エンジェル エンジェル エンジェルの評価
エンジェル エンジェル エンジェルの感想
おばあさんとその孫の、交流の話
著者の作品を読むのは、これが初めてです。読みやすい文章を書く方なんですね。孫のコウコが主人公の、現代の時間、と、おばあさんのさわこが主人公で、女学校時代の、過去の時間、の、二つの時間軸が交互に現れます。これが、単行本では、両方現代文だけれども、活字の色が違う事、文庫本では、活字の色は同じだけれど、現代文と、旧かな遣い文で表現されているそうです。面白い趣向だなあと思いました。そして、1ページ当たりの活字の量が少ないので、本嫌いの方でも、読みやすいかな、と思いました。コウコが買ってきた熱帯魚(エンゼルフィッシュ・ネオンテトラ)と、小さい水槽、というのを読んで、「ああ、まずい事になっちゃう」と思ったら、その通りになって、題名からは、ファンタジーな感じがするのに、どうなっちゃうんだろう、と心配しました。最後に、さわちゃん(おばあさん)は、心が救われてから、亡くなったと思いたい…もっと早く、木彫...この感想を読む
エンジェル×エンジェル×エンジェル=負のエンジェル?
梨木香歩さんの描く少女は、いつも『いい子』です。そして、当人はそんなイメージは作り物だと気付いている気がします。この作品は、特にその傾向が顕著で、主人公は自分の心の不安定さとコーヒー依存を抑えるために、熱帯魚を飼うことを親に許してもらいます。結果的にですが、それは祖母の夜のトイレ介助を引き受けることと引き換えという形になり、ここでも図らずも『いい子』にした結果得た成果という形が描かれています。そんな作られた『いい子』が選んだ熱帯魚がエンジェルフィッシュ、天使というのはなんとも寓意的です。そして、その熱帯魚の水槽のモーター音が祖母に少女時代の心の傷を思い出させ、孫と秘密の会話をするきっかけとなります。祖母の傷とは、心の中では大切だと思っていた2人の人、憧れのクラスメートと姉のように慕っていたお手伝いの女性を攻撃してしまったという思い出です。それが、水槽の中で繰り広げられる熱帯魚同士の殺し...この感想を読む
許し
「印刷ミスかな?」タイトルを見たときに思いました。「エンジェル」という言葉を3つ並べるタイトルにはどんな意味が込められているのか。ただインパクトを与えたいだけなのか、気になって手に取りました。主人公、おばあちゃん、熱帯魚がこの作品には登場していました。他にはない不思議な空間の内容でした。時代をまたいで、「許し」を得ることは良いのかわるいのか。児童文学のわりに深い内容で、是非自分の子供に読んでもらいたいものです。ボクに子供はいませんが...笑また、「死」についても書かれているので、そこに関する点でも、考えさせられるところはありました。