もっと登場人物と仲良くなりたかった - スロウハイツの神様の感想

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スロウハイツの神様

3.753.75
文章力
4.50
ストーリー
3.75
キャラクター
3.50
設定
3.75
演出
3.75
感想数
2
読んだ人
2

もっと登場人物と仲良くなりたかった

2.52.5
文章力
4.0
ストーリー
2.5
キャラクター
2.0
設定
2.5
演出
2.5

目次

長すぎるプロローグ

第一章の始まる前にプロローグがあります。短いプロローグです。そして第一章が始まります。ん?んんん?何だか読んでも読んでも、物語が進んでいかないっていう感じがしたのは私だけでしょうか?登場人物の細かい紹介が延々と続いているようでなかなか本題に入っていかない気がしました。いや、これは長ーい伏線で、すでに本題に入っているのかどうか分からずに、私は活字を追っていきました。

辻村深月さんは本屋大賞も受賞した人気作家さんで、ファンの方もとても多いです。私もこの『スロウハイツの神様』は友人に教えてもらいました。何冊か、いや10冊以上は辻村さんの本を読んでいますが、ちょっとこの本はダメかもしれないなーと挫折しようと思ったのは初めてのことでした。すすめられた本って合わない場合もあるよなあとため息をつきました。それくらい、この本の冒頭部分には私を惹きつけるものがありませんでした。

登場人物が全員、クリエーターまたはその卵たちである必要があったのかなーと疑問に思いました。別にスーちゃんはお料理の得意なフリーターでも良かったんじゃないのかしら。ちょっとDVっぽい五十嵐君にひっぱられて絵が書けなくなったこと、芦沢さんの仕事を断ったこと、そしてスロウハイツに出戻ってきたことに、なんの意味があったのだろうかと今でも思ってしまいます。

んー、上手く表現できないけれども、登場人物のデティールに気をつかいすぎているような気がしてしまいました。

スロウハイツの皆様

残念ながら、スロウハイツの人たちの誰にも共感ができないまま、読み終わってしまいました。共感できないイコールつまらないというわけではないのです。でも、私は自分の小説の読み方として登場人物の誰かの気持ちになって、その気持ちに寄り添いながら物語を堪能したいタイプなんです。それが、殺人鬼であっても、生まれる前の胎児であっても。でもスロウハイツには私は暮らせませんでした。環ちゃんのお眼鏡にかなわなかったのね。

妹の桃花ちゃんと狩野を付き合わせたのは、どんな意味があったのだろうかとか余計なことばかり考えてしまいました。辻村さんは、きっとこの小説を書いているときはすごく楽しかったんじゃないかなと、想像しました。自分が考えたキャラクターにひとつひとつ個性を与えていく。どんな容姿にしようか、好きな食べ物は何にしようか、どんな服を着せてみようか…。私はもちろん小説を書いたことはないけれど、その作業はもちろん大変だろうけれど、小説家の醍醐味のひとつなんだと思いました。そうやって作られた環ちゃんのちょっとエキセントリックな性格が受けいれられなかったし、何かと物分かりのよさそうなチヨダ・コーキも、斜に構えてるような正義もスロウハイツの皆様は、私から遠いところにいる人たちでした。んー、でも加々美さんの底意地の悪そうなところは正直でいいかな。少し、その内面を知りたくなりました。ヒール丸出しだったけれども、善人ばっかりの物語なんて現実味がなくておかしいですもん。

本当の意味での神様

興味があったのは狩野の過去の話かな。重苦しそうな過去をチヨダ・コーキに告白していたけれども、その話を今度は読んでみたいなと思います。拝島さんって必要だったかな?あ、謎の原稿事件をかく乱させるためのダミーだったのでしょうか。

あら、私ったら、あんまりこの物語を理解できていないんだわ、きっと。そこまでの読解力が備わっていないのかもしれません。ただ、ひとつ確実に言えるのは、私がもっともっと若い時に、みずみずしい感性でこの本と出合えたら、きっとすごく感動していたんじゃないかということです。あ、ケーキのエピソードはとても好きでした。あの場面では、その優しさにうるうるっとしてしまいました。かっこいいぞ!

結果的に環ちゃんは私が思っていたような、自信過剰でエキセントリックなだけの女の子ではなかったし、チヨダ・コーキはずっと神様が誰なのかを知っていた…。お互いにとってお互いが神様だなんてなんて素晴らしいハッピーエンドなんでしょう…って素直に感動するには歳をとりすぎてしまいましたわ。といいますか、元々対象年齢から外れていたのかもしれません。大事なことよりも、犯人捜し(神様捜し)の方が先にたってしまって。しかもそれが、かなり分かりやすかったものですから、物語自体を楽しむことが後回しになってしまって、残念でした。また、辻村ワールドのリンク先のどこかで彼らに会えることを期待しています。

小説家が小説家の話を書くことは、実情をさらすことでもあります。創作の場面などは、あまり出てこなかったけれども、かなり思い切って自らをさらした面もあったのではないでしょうか。編集者との関係とか、雑誌の売り出し方とか。そういう意味では本当の神様って俯瞰している小説家?いや、創作の苦労の全てを知らずとも勝手な感想を言い合う読者なのかもしれませんね。

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