どうすればベルセルクは終わるのか
完結するのか、それが問題
1989年から始まり、現時点で39巻刊行されているダークファンタジー漫画、ベルセルク。
ある意味同じ系統の漫画として、H×HやBASTARD、BLACK LAGOONなどがあるだろう。
どれも、作者がサボーー、色々な理由で進行が著しく遅くなっている作品だ。きっと、より密な書き込みを、より面白く斬新な展開を、自分の作品に徹底したこだわりを持っているのだろう、多分。
なかでも、BLACK LAGOON以外の作品は、大きく風呂敷を広げすぎてしまい、正直終わりが見えなくなってしまっている。
完結するのが先か、忘れられてその内にーー
ただ、ベルセルクに関しては、十二分に希望は残されていると思う。
特別な二人
まずは幼少期のガッツは傭兵である父に認められたくて剣を振っていた。母が死に、父の元で生きて行くには強くなければいけない。
父の役に立つ事で、初めて彼は、自分が世界から認めらたと感じたのだろう。
それは父を殺してしまうまで続いたが、それはやがて自分の居場所と安息の地を求める想いに変化していく。
剣を振る事しか出来ない、誰かを殺す事しか出来ない、言い換えれば剣を振り、人を殺す環境しか、自分には存在価値が無いという、謂わば安息とは正反対の環境でしか生きられないという、ある種の呪いの様な思い込みが、彼の居場所を制限してしまっていた。
そんな中でグリフィスと、鷹の団と出会う。
彼の人生の中で、一番幸せで、このまま行けばグリフィスの元での国取り物語となったはずだ。それはそれで面白そうではあるが。
だが、勿論そうはならない。
過去から引きずる自分に対する評価、剣を振るしか出来ない、その想いが彼の人生を狂わせた。
一方グリフィス。
自分の国を手に入れる、その強すぎる想いは幼少期に由来するのかもしれない。
例えば、元々ジプシーの様な漂泊の民で、国を持たないが故の差別や偏見、家族の死など、ガッツに匹敵する過去があってもおかしくない。
ただ彼にはガッツと違い、大きすぎる野望とも言える明確な夢があり、そこに向かう事が出来たのだろう。
ただ、自分の国を手に入れるという言葉、その先が無い。
極端な話、国を取り、他国を攻め、世界を統一する、そこまでは無いのだ。
国を居場所に置き換えてみよう。
自分の居場所を手に入れる、彼もまた、ガッツと同じく自分の居場所を求めていたのでは無いか。
ただ、ガッツと違い、その居場所を作る為、同じ様な想いを抱えている人を集め、国という形にしただけで。
そして、その途中で出会ったガッツに、彼はきっと自分と同じ居場所を求める想いを感じ、仲間に誘った。
産まれた頃から抱えていたガッツの想いは、きっとグリフィスに匹敵しただろうし、ただでさえ強いガッツの想いに、明確な目的と方向を与えれば、自分に並ぶ存在になり得ると思っただろう。
知に勝る自分に、武を誇るガッツ、グリフィスはきっと自分の片割れ、相棒、恋人にも似た思いを持ったのかもしれない。
だから自分の醜い部分を見せる事も出来たのだろう。
しかし、その幸せな時間は長く続かない。
グリフィスの友に対する言葉を聞き、鷹の団を去る事を決めるガッツだが、その心境はきっと幼少期の想いが影響しているのだろう。
父から認められたい。
父は役に立つ事で認めてくれたから、ガッツは剣を振り、役に立つ事でグリフィスに認めてもらっているつもりだった。
だが、グリフィスは父とは違った。
その衝撃は、ガッツの安息の地の根底を揺るがすのには充分だっただろう。
そしてガッツは、自分が唯一出来ると自信を持って言える事、剣を振る事を極める為に 鷹の団を出る。
きっと、剣を極める為に不必要だと思うものを一旦手放し、また一人きりになる事を選択する。
グリフィスは焦っただろうし、理解出来なかっただろう。
多分グリフィスは、ガッツは自分と同じ様に思っていてくれているだろうし、共に高みを目指すものと思っていただろう。
しかし、ガッツは自分が離れようとしている。
片割れが、共に夢をつかむ存在が居なくなる。
グリフィスにとって、この頃にはガッツが隣にいる事が、ガッツと共にいる事が、すでに安息の地にいる事と同義語になっていたのだろう。
ガッツが去り、残されたグリフィスは、やっと手に入れた安息の地を失い、ある意味正気を失ってしまったと思われる。
ガッツはガッツで、グリフィスが求める存在になる為に旅に出たのに、戻ってみれば、まさになんでこんな事に、と言った所だろう。
互いに互いを特別だと思うからこそのすれ違い、まるで痴話喧嘩だ。
結局は?
最初に戻るが、完結出来るかどうか、それは主人公であるガッツと、そのライバルであり、ある意味想い人であるグリフィスの問題が解決出来れば良いと考える。
逆に言えば、二人きりで対決出来れば、ガッツ的には問題無いと思える。
ゴッドハンドだろうと、ファルコニアだろうと、最終的にはそこに落ち着くだろう。
では、どうするのか?
グリフィスは自分の国を手に入れ、人生の目的を果たした。
先述の通り、安息の地をグリフィスが求めていたとすれば、今後のゴッドハンドの介入は邪魔でしか無い。
「俺は自分の国を手に入れた。その国にとって、お前達は邪魔なだけだ」
的なセリフを言って、他のゴッドハンドに剣を向けても違和感は無さそうだ。
そこに、ゴッドハンドに因縁のある骸骨の騎が混じり、更にガッツ一行が加わって戦闘突入。
なんやかんやで、グリフィス以外のゴッドハンドや骸骨の騎士、グリフィス配下の使徒が死に、鷹の巫女と正気に戻ったキャスカが見守る前で、二人が最後の決闘。
流れ的に二人は相打ちで死んでしまい、ファルコニアは鷹の巫女が治め、キャスカは旅に出る。
最後のコマは、グリフィスの仮面とガッツの大剣が、二人が初めて会った丘に置かれていて、そこに花が一輪。
こんな感じで行けば、後五〜六巻位で終わるかと思います。
どうでしょうかね?
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