あかく咲く声のあらすじ・作品解説
『あかく咲く声』は、緑川ゆきによる漫画作品で、花とゆめCOMICSから通常版が全3巻、白泉社文庫からは文庫版が全2巻刊行されている。本作は、『LaLa』1999年2月号にまず読み切りとして掲載され、その後同誌1999年7月号から2000年11号にかけて連載された。連載が終了した後は、『LaLa DX』2000年11月号と2001年1月号にそれぞれ1話ずつ番外編にあたる読み切りが掲載されている。2000年には、第25回白泉社アテナ新人大賞を受賞している。 物語の主人公・国府佐和は、同級生・辛島の小さな笑い声を聞いたことがきかっけで、彼に恋した女の子である。辛島は、自分の声を聞かせることで相手に暗示をかけることができる特殊な能力を持っており、彼は度々警察の仕事に協力していた。そして佐和は、偶然辛島が能力を使う場面を目撃してしまう。この漫画では、戸惑いや苦悩を乗り越えて徐々に距離を縮めていく佐和と辛島の関係が瑞々しく描かれている。
あかく咲く声の評価
あかく咲く声の感想
見えない人の心をどう描くのかを迷った作品
「夏目友人帳」のベースとなるような作品このあかく咲く声を見ていると、辛島世津が、夏目友人帳の夏目貴志と重なります。二人とも心に痛みを抱えています。人を傷つけてしまうのではないかという痛みです。特殊な能力が辛島は「声」、夏目は「妖怪を見る力」。悪人に利用されようとしたりして、その危い感じが二人ともに共通しています。作者が文庫の最後に「ふたり、を描けるようになってほしいと担当さんがおっしゃっていた意味が今はよくわかります。私にとっては、とても挑戦に満ちた作品でした。」とありました。このあかく咲く声は、気持ちをすごく大事に描かれている作品です。普段は気にしていない声というものを題材にして、辛島くんと国府さんの気持ちがよく表されています。心のなかの想い、形のないものをどうやって描くのか、作者がこの作品で担当さんと模索してくれたおかげで、次の作品に引き継がれていき、あの「夏目友人帳」が生まれたの...この感想を読む
独特のせつない世界観。
今や「夏目友人帳」で有名になってしまった作家さん。独特のトーンが大好きです。何というか、ファンタジーなのに空気が感じられて映画みたい。人を操る“声”を持つ高校生の男の子と、その子を追いかける女の子。ヒロイン国分ちゃんのひたむきさが良い。辛島君の孤独感も良い。そんなに年中空きビルに犯罪者おらんやろーとか色々つっこみ所はありますが、そこは流せる程度。恋愛ものとしても、片思い?なのに熟年カップルのような空気感。それがまたいい。アクションがあるのに、「音」がテーマなのにどこまでも静謐な感じがまた心地いい。「夏目友人帳」でファンになった人も惚れ直せる作品ではないでしょうか。