トムクルーズ本領発揮
トムクルーズでないとできない映画
この映画はとにもかくにも彼以外ではできない映画だと思う。ついでに言えば、キャメロンディアスの役柄も彼女でないとできないだろう。この映画には、トムのキュートで若干軽そうな(いい意味で)笑顔がぴったりとはまるシーンがたくさんある。この笑顔を見てまず思い出すのは、「ザ・エージェント」で、酔っ払ってドロシーの家に押しかけた時だ。本当は不安なのに強がっているような、でも決してシリアスではない笑顔はトムしか出来ないと思う。それと同じように、キャメロンディアスも可愛らしくいい意味の軽さを持ち合わせ、それをミックスさせた雰囲気を上手に醸し出している。
空港で初めてロイ(トム)を一目見た瞬間のジューン(キャメロン)の表情は、絶対役柄を完全に自分のものにしていないと出来ない表情だと思う。とっさにでる仕草全てがその役柄にはまっているというのは必要最低限のことかもしれないけど(ちょっとした違和感は観る側はかなり敏感に感じるものだ)、それができない俳優も少なくはない。そういった意味で、キャメロン演じるジューンは完璧だった。出会ってすぐくらいからロイに心を打ち明けまくりの軽さ、トイレでの化粧直しの一部始終、その他諸々すべての仕草が可愛らしく、確かに「マスク」の頃から年はとったけれども、その上で今の年でできる可愛らしさを彼女は手に入れていると思う。
この映画の全てはトムクルーズのその魅力で出来上がっている映画だと思う。そんな映画はなにもこれだけではないのだけど、それでもこの映画は彼の素晴らしさをかなり感じることができるのではないのだろうか。もちろん昔から彼の素晴らしさはあるのだけど年を重ねて演技にも役柄にも幅がでたというか、キャメロンディアスと同様に、ただカッコイイというだけでない懐の深さを年をとることで得たような気がする。
アクションシーンに笑いを感じるところが多い
冒頭のアクションシーンはテンポがよく「ミッションインポッシブル」シリーズにも引けをとらないものだったけど、この映画に関してはほとんど全てのアクションシーンに笑いが加わってきている。ジューンが運転する車をバイクで追いかけてきて視界から消えた瞬間バイクだけが通り過ぎ、ついでロイが車の屋根に落ちてくるところなんか何回見ても面白いし、そのセンスは少し日本のそれに近いものがあるような気がする。ジューンが銃を撃つ真似をして遊んでいるときにすごい数の敵がロープで降りてくるところとか、ジューンが薬を飲まされ朦朧としているときにロイがぶら下がって揺れているところとかも(ただこの時の音楽がちょっと安めなのが気になったけど、これはこれでありなのかもしれない)ヘリから飛び降りるときにジューンが結構雑に扱われているところとか、なんとなく日本的な笑いのセンスのようなものを感じる。この映画の魅力の一つはこういったアクションにあるのは確実だけどそれだけでなく、軽さとテンポのよさもその魅力だと思う。
また個人的には、やたら冗長なカーチェイスは好みではない。あまり長すぎるとだんだん映画の内容から気がそれていってしまう。でもこの映画はカーチェイスはあってもちょうどよい長さで、ストーリーのテンポを崩さない。そこも気に入っているところだ。
最後のバイクでの追走劇もいい。ジューンをいきなり前にもってきたりするところはどうやってるのと思うけれど、やっぱりトムクルーズかっこよすぎと思う。
トムの軽い演技の大切さ
ジューンに深刻さを与えないようにいつも笑顔(うさんくさくとも)で接するところとか、ジューンの中途半端な理解者ロドニーを一瞬で彼女には向かないと一蹴するところとかそういうところは、恐らく世の女性を(不本意だけど私も)キュンとさせてしまうところだと思う。でもそういった策略的なところを感じさせずそういった態度自体ロイが自然に持っていることと感じられるからこそ、余計信用してしまうのだと思う。
個人的に気に入っているシーンは、ロドニーを撃ったロイとの会話で「good」を多発するところとか、逃げ回るジューンにしびれを切らしたように怒ってみせる駐車場のシーンとか、他にも色々あるのだけれどその全てがトムの演技の魅力によってできあがっているような感じがする。他の誰が言っても「with me.without me.」のあの名シーンはできあがらないと思う。
ちなみにこのセリフは私たち夫婦の中でもいまだによく言い合うセリフでもある。
ドイツ、スペインに渡ってからのワクワク感
誰しも知らない土地に渡ってからのワクワク感を感じたことはあると思う。この時もドイツに渡ってからのジューンの控えめながらもそのはしゃぎぶりにものすごく共感と好感をもった。非日常な状態におかれているにもかかわらず、その景色の美しさに目を輝かせる様は女性なら誰しもあるはずで、だからこそロイが仕事でそういう目を持っていないことにジェラシーではないけど、それに近い気持ちを抱いたのかもしれない。だから仕返しにあのようなロイを売るようなことをしてしまったのかもしれないけど、そうなってもロイはどこまでもクールで、自白剤を飲まされたジューンが「再会がうれしくないの?」と言われた時に狙ってくる銃弾を完全に無視してジューンにキスするところなど、監督の思惑通りなのだろうけど、ツボを押さえすぎだろうと思った。
ドイツもスペインも行ったことないのだけど街並の美しさもきちんと映してくれていて、もともと行きたい国ではあったのだけど、その順位はそれぞれ少しあがったくらい魅力的な街だった。
ポール・ダノの存在感
永久電池を発明した高校生の役で登場している見るからにオタク風な彼だけど、その存在感や演技力には目を見張るものがある。彼は「テイキング・ライブス」や「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」でも登場していたけど、それはあまり印象に残らない演技だったように思う。でもこの映画の彼の演技は妙に心に残り(列車でおとりっぽく前に出る時のぼさっと感とか、車で移動中に助手席の男が殺されたときの表情とか)、役柄を自分のものにしている以上の、そもそも演技などしなくてもサイモン自体が彼自身のような、そんな印象を受ける。最後ロイにかばわれて傷も受けてないのに死ぬの?などと心配する弱弱しさなど、下手したら観る側の反感を買いそうなものなのにそれがないのは、彼の作り上げたサイモンのイメージがリアルだからなのかもしれない。このあたりの評価は完全に主観なのでどう思われるかわからないけど、私は彼の演技がかなりすごいと感じた。
キュートなラスト
スパイの世界から消されるかもしれなかった(安心・安全を連呼する相手は危険というロイの話によると、かなり危険な状態だったに違いない)ロイがジューンによって助け出されてからの逃避行は完璧すぎる。今までロイに助けられっぱなしだったジューンもいざ車の運転をさせたらプロ級だし、それで2人が言い合った夢の場所へ向かうだなんてロマンティックすぎて身もだえしてしまうくらいだった。最も目的の地までは3000キロ以上なので北海道沖縄間よりも遠いということは無事そこまでたどりつけるかどうかは実際わからないのだけど、あのラストはキュートでロマンにあふれ素晴らしい。トムがショートパンツをはいているくだりとかジューンはきちんとやりかえしている小憎らしさも可愛らしく、やっぱり私はキャメロンディアスが大好きだと再確認した映画だった。
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