悔いても悔やみきれない死を題材にしたドラマ
木村拓哉さんの個性が出しにくい時代物
木村拓哉さんは今までいろいろなドラマの主役級として出演されているが、現代劇では「皆同じような性格の役」という厳しい評価がある。今風の若者の役だと木村さん「そのまま」の等身大で演じることができる役のオファーが偶然多いのだと思う。これは木村さんがイケメンの代表格であるため、脚本家も木村さんをイメージして登場人物の性格づくりをしている可能性があり、木村さんの演技力の問題だけとはいいがたい。ところが、この「華麗なる一族」は時代背景が1960年代であり、役柄的には万俵財閥の跡取り息子という特殊な立場の役のため、木村さんの個性が非常に出しにくい役柄となっている。それ故に木村さんが、自分とは全く違う個性の役柄も力強く演じることができる俳優として認められることになった作品と言える。木村さんの演技の幅を見せつける作品となっている。
妙な時代背景を随所に感じる
財閥同士の力関係や、新しい事業を展開するにあたっての考え方の違いなどはいつの時代でも共通のものかもしれない。しかし、現代では同族の意思だけで経営が成り立っている財閥というのは少数派というよりほぼないと言ってよいだろうし、親の私情が経営方針に反映してしまうあたり、理不尽であるが時代を感じる。登場人物の名前も非常に安直であり、鉄鋼関係を任されたのが鉄平、銀行を任されているのが銀平、女姉妹は一子、二子といった具合の名前である。昔は末の子供に末子やとめ子となづけるなど、どこか子供を親の都合で適当な記号を付けて読んでいたような節もある時代であったため、大財閥と言えどもそのあたりは親である大介がいかに子供を自己都合の財閥繁栄の道具としか思っていなかったかがわかる。のちに鉄平の死につながってしまう血液型の誤判定もそうであるが、本当にいい加減なことがまかり通っていた時代なのだ。
なんとかならなかったのかと後味が悪いラスト
自分は父の実子ではなく祖父と母の不義の子である疑いを持ちづ付け、血液型の誤判定を信じて、父の愛を受けられないことに失望した鉄平は、自分が心血を注いできた阪神特殊製鋼の倒産が引き金になり猟銃自殺をしてしまう。優秀で思いやりがあり、事業にも情熱を注ぎ家族思い。非の打ち所がない鉄平が唯一叶わなかったのは、父親に愛してもらうことだった。少々考え方が合わなくても、せめて血液型の判定が正しいもので、鉄平が実は実施だという事が大介に事前にわかっていたら、同じ結果にはならなかったろうと思う。こんな些細な誤判定が、愛を失い生命を絶つ引き金になろうとは、なんともやり切れないドラマである。
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