キムタクのキムタクによるキムタクのためのドラマ - 華麗なる一族の感想

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華麗なる一族

4.254.25
映像
4.25
脚本
4.50
キャスト
4.25
音楽
4.25
演出
4.00
感想数
2
観た人
5

キムタクのキムタクによるキムタクのためのドラマ

4.04.0
映像
4.0
脚本
4.0
キャスト
4.0
音楽
4.0
演出
4.0

目次

敗者として屈するキムタク

「華麗なる一族」がドラマ化されると知って、私は驚いた。だって時代背景が今とは違っているから。現代風にリメイクするのかなーと思っていたら、戦後のセットを作って撮影するという。なんという力とお金の入れ込みよう。それもそのはず。だって主演は木村拓哉なんですもの。え?木村拓哉が主役を…?それはちょっと若いんでないかい?とまた驚く。だってこの物語の主人公は万俵大介でしょう?木村拓哉にしては、全然若すぎるじゃん。…と大きな勘違いをしていたくらいだ。じゃ、木村拓哉は鉄平なわけね、ふんふん…え?鉄平?キムタクが?私はそれも結びつかなかった。ま、鉄平にしても、ちょっと若いわね。たしか原作では鉄平は40歳手前だったはず。この当時の木村拓哉は30過ぎくらいだったのかな?まあ、それも良しとする。納得はいかないが、譲るとする。(←謎の上から目線) でもね、鉄平って自殺するんだよ。父親の策略に負けて自殺する鉄平と木村拓哉をどうしても重ねることができなかったのである。

木村拓哉はヒーローだもの。いつも前向きで、ドラマの中でも視聴者を虜にする。ある時は照れ屋のピアニストとして、ある時は破天荒な検事として、またある時は不治の病の恋人を支えるカリスマ美容師として…。ちょっと順番が怪しいかもしれないけど。とにかく木村拓哉は勝ち続け、観る人に希望と感動を与える存在であったのに。そんなキムタクが自ら死を選ぶ役を演じるなんて。私には到底信じがたいことだったのである。

しかし、原作とドラマの内容が変わってしまうことはよくある話だ。今回は、大きくアレンジして鉄平が高炉を建ててしまうんじゃないか、逆に大介に「参りました」と言わせてしまうんじゃないかと期待して観ていた。ドラマのなかで、やはり鉄平は逆境を乗り越えていった。いいぞいいぞ…と思っていただ、やはり原作どおり自殺してしまった。最後、ちょっと変な終わり方で死んだはずのキムタクを再び画面に登場させてはいたけれど。父親との勝負に負ける木村拓哉の演技がやっぱり良かったような、観たくなかったような微妙な気持ちになるキャスティングだった。

鉄平の意気込みに惚れる男たち

最後に死を選ぶとはいえ、鉄平の魅力にズキューンとやられてしまった登場人物は数多い。大同銀行の三雲頭取もそうだし、沖仲仕のゲンさんもそう。ゲンさんに至っては敬愛する鉄平のために命を投げ出してしまう。そこは感動したけど、現実的じゃないわ。かえってドラマを安くしてしまう。そして、舅の大川さんも。政略結婚の割に婿殿に肩入れするのよね。そこんとこ「白い巨塔」の五郎ちゃんの舅の産婦人科医とカブったわ。西田敏行さんの演技が一緒だったもの。その人たちもみんな不幸にさせてしまう大介の神通力たるや、何という強靱なことよ。こんなふうに鉄平に惚れ込むのはやっぱりキムタクの熱さだと思うの。木村拓哉が演じるからこそ、こういった脚本になってしまったんじゃないかと深読みしてしまったわ。

阪神銀行から出向している銭高さんが、銀行側を裏切って帳簿をもって阪神特殊鋼に戻ってきたところが、鉄平の魅力を最高に引き上げた場面だったと思うな。あそこの、BGMからして泣く気満々。前工作の子どもとのキャッチボールなんかも、さもありなんの演出。わかっていても、昂ぶってしまう。いいシーンだったよ。それだけの味方を最終的に不幸にしてしまったんだから、万策尽きた時には鉄平は死を覚悟していたのかもしれない。

大介の無言の圧力と本心

大介が銀行内の支店長会議で、目力でノルマを上げさせていくところは圧巻だった。北大路欣也ならではの迫力。でも今ならブラック企業だわ。私も中学の部活なんかの時に経験がある。だらけた練習をしていると顧問がやってきて、ミーティング。「やりたくない奴は帰れ」と怒鳴りつけ、沈黙の後、ポツリと一人が「やります!」と声を発すると連鎖反応のように「やります、やります」の大合唱になる。内心とは裏腹に。部活あるあるでしょ。でも、大介はそれで死人が出ても動じない。自己の目的のためなら手段を厭わない。そんな父親に、優しすぎる鉄平が勝てるはずがなかったのかもしれない。最初から。

相子が最後の時に「私があなたを捨てるんです」って言って、大介に勝ったようなことを思っていたかもしれないけれども、大介にとってはそんなことどっちだっていいんだと思う。銀行の合併に勝利し、鉄平の死によって妻の潔白が明らかになった今、相子の心の中なんてどうでもいいの。好きに言っていろって感じ。相子のことは怖くないけど、暴露されてスキャンダルになるのは怖い。ただ黙って消えてくれればそれでいい。そういう男なのだから。大介がこれから敗北を経験するであろうことは、視聴者に明かされる。それでも、最終回の時点で大介が敵わなかった相手は自らの父親、敬介だけだったのかもしれない。あの、キムタクにそっくりすぎる肖像画の…ね。

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4.54.5
  • tamamatamama
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