社会風刺や哲学を盛り込んだSF大作
中心人物達の職業が宇宙ゴミの掃除屋というところがまず斬新!
宇宙ものといえば、宇宙飛行士や戦艦物なのに、これはまさかの宇宙のゴミ掃除!今はまだ宇宙が手の届かない憧れの場所なのに、物語の中では宇宙はちょっとした外出先のよう。スペースシャトル(民間用)のパイロットが花形職業であることもなんだか現代と似たり寄ったり。そんな中、ゴミ掃除って。この物語の宇宙はゴミだらけになっている。宇宙開発ってこんなに宇宙を散らかすんだなって、そんな隠された事実を風刺しているかのよう。人が宇宙を観光するようなそんな中で宇宙ゴミの存在は脅威で、なくてはならない存在になっている。地球のゴミ問題と同じ。SFなんだろうけど、すごく社会問題に突っ込んだ内容になっていると思う。
物語はのんびり進んで行くけど、内容はかなりシリアス
宇宙に出かけることが当たり前であるこの世界では、デブリ回収はものすごく大事な仕事なのに社会的にはすごく雑な扱いなのがリアル。リストラ寸前みたいなメンバーが集まってるし。そんなゆるい日常なのに、スペースデブリが衛生にぶつかりそうになったりと、世界を揺るがすような危機が度々起こる。地上では未だ貧富の差があるし、テロリストなんて奴らもいるし、そんな部分もしっかり描写されている。人が宇宙に出て生活するようになるとこんなことが起こるのか、それぞれ別の立場や職業の人がどんな考え方を持っているのか…物語の中にはそんな葛藤や宇宙のリアルが映し出されている。
物語が本当に伝えたいのは『人とは何か』いうすごく哲学的な部分だと思う
主人公たちはあくまでコミカル。明るくふざけ合い、激しくケンカ。いがみ合いながらも、一見仲を深めているように見えるが、どこか人の根本的な部分ですれ違う2人。ぶつかり合う本当の理由を核心に触れずストーリーを進めて行くところがよりリアルな人間描写になっている。他人を受け入れず強い思いを自分の中に閉じ込める頑なな考え方と、全ては『愛』だといい、人と人が交わる事で生きていけるという考え方、この2つの考えが交わって行くところが見どころ。もう1人の自分が実際に姿を持って自分の中に登場するところが『手強く』表現されているとおもう。他者と交わることで、自分自身と向き合い、抑えていた本当の自分の気持ちを受け入れて行く、その過程が面白い。誰しもいるよね、そんなもう1人の自分が。大人だからこそドキッとしてしまう、そんな作品。
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