共感度100%。普通の女の子が、人生の学校(スコーレ)を通して成長する物語
あの時のわたしは…主人公の日常に、自分の思い出を呼び起こされる
初めて読んだとき、主人公の麻子に対する共感を飛び越えて、「わたしのことかな?」と驚いたほどです。
自分より可愛く、要領のいい妹へのコンプレックス。自分が自分じゃなくなったような初恋。社会に出て直面する、居場所のない感覚。仕事で初めて得る達成感。それぞれの章の麻子の環境に自分を重ねてしまって、「わかる!そうそう、そうなんだよねー!」と頷きどおしでした。中学生から今までの自分が経験してきたスコーレを思い浮かべ、幼いころの家族のワンシーンや、しばらく会っていない昔の友達、憧れだけで終わってしまったひと、甘さと苦さの混ざったような感覚を引き起こされました。
大切なものを見つけながら、少女から大人へ変化していく
特に、麻子が社会に出てからの「No.3」「No.4」の2章は、ちょうど自分自身の仕事の挑戦の時期に読んだこともあって、お守りのように繰り返し読んだ部分です。
周りになじめず商品にも愛着が持てず、ただ過ぎていく時間のなかで仕事らしい仕事もできていない。そんな状況で一足の靴と出会い、みるみる商品への愛が芽生え、お店のディスプレイを変える使命感に燃える様は、読んでいてとても気持ちのいい箇所でした。
異動した先で、人間関係の変化や周囲の仕事ぶりに戸惑うところも、働く女性の多くが経験することではないでしょうか。初めての海外出張で、持ち前の「モノを見る目」を存分に発揮し、全力で仕事を楽しむ様は、入社時に黙りこくって掃除しかできなかった麻子と比べると感動するほどの成長ぶりです
偶然にもこの時麻子と同じイタリア出張に行くことになり、自分を奮い立たせるため、空港の出発ロビーで何度もこの部分を読み込んでいました。
日常のほんのひとこまも、大事に思わせてくれる描写
この小説に出てくるモノの描写がとても好きです。螺鈿のペンダントトップ、「ただものではない」と感じた新しい靴、茅野さんの部屋に置いてあるあれこれ。モノを見定める力がある麻子だからこそ、丁寧な見方でひとつひとつをとらえることが出来るのでしょうか。モノに対するいとおしさを、実際に手に取ったように感じます。
なかでも気に入っているのは、茅野さんの部屋に言った時のエピソード。
「下駄箱の中をのぞきたいだなんて、生まれてはじめて思った」
「使い勝手を考えられ、よく使いこまれたこういう場所が私はとても好きなのだ」
こんな表現だけで、もうワクワクしてきます。
極めつけは、茅野さんのつくるごはん。
実は、このごはんが食べたくて食べたくて、自宅でメニューを再現したほどです。
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