フェイスレスの矛盾 - からくりサーカスの感想

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からくりサーカス

4.504.50
画力
4.38
ストーリー
4.38
キャラクター
4.38
設定
4.75
演出
3.63
感想数
4
読んだ人
8

フェイスレスの矛盾

4.04.0
画力
3.0
ストーリー
3.5
キャラクター
3.5
設定
5.0
演出
5.0

目次

尋常じゃない伏線

さすがにこの漫画を超えるほど、複雑に入り組んだ設定の物語を見つけるのは難しい。それくらいに大風呂敷なこの漫画だが、よくたたみきったものである。そしていちいち熱い展開、華々しき散り際、凍りつく絶望感、中だるみの黒賀村……このあたりが、読んだ人の大体で一致する感想だろう。黒賀村に関しては、コミックで一気読みする分にはそこまで気にはならないけれど、連載中は間違いなくキツかっただろうなと予想される。あの辺、実は伏線的にもあまり意味がないターンであり、その後の伝説の「ぜひっ」に繋がっていることを除けば、まるまる消してしまっても構わないくらいだ。当然その「ぜひっ」のインパクトが凄かった以上、存在価値はあったのだが、できればテンポよく、伏線とも混ぜて欲しかったかもしれない。と、早速黒賀村の文句になってしまったが、ようするに他は素晴らしかったという話でもある。とりわけキャラの散り様は半端じゃない。なんだよあの格好良さ。ワンピースで言えば、メリー号のあのシーンが怒涛の勢いでやってくる感じだ。メリー艦隊である。なにそれ怖い。3巻の鳴海、サハラ編、フランシーヌ人形、最古の四人と、上げればきりのない、死の花道。それら全てが指示しているのは、ひたすらにラスボス、フェイスレスの悪徳の極みである。作中何度も繰り返される不幸も悲劇も、全部こいつのせいという意味で、極めて恨みやすいラスボスである。であるのだが……。

フェイスレスは、何がしたい?

このフェイスレス、動機の下らなさもポイントの一つなのだが、これがどうもイマイチしっくりこないのは筆者だけではないと思う。確かに悪いやつなのは間違いないが、しかし、どうだろう。恋に狂った奴が犯しうる悪行って、当然だがもう一つ、あれがあるじゃないかと言いたくなってしまう。ここではあえて言わない、ブラッドハーレー的なあれである。……当然少年漫画で、それをするわけにはいかないだろう。これには両手を挙げて賛成である。少年漫画に、性的暴力の要素は必要ない。決して存在してはいけない。それは少年誌の、一つの契約である。子どもに対して、その手の要素は余計でしかないのだ。あるいは、正しい形で理解ができないとも言う。だから、少年漫画での悪役が犯す所業は主に悲劇性が中心になる。それならば子どもにもわかる。そうすることが絶対的に正しい。他にどれだけ残酷なことをしようとも、性にまつわることだけは触れてはならない。折角の悲劇も、かえって濁らせる結果になるだけだろう。過剰だからダメなのではなく、少年漫画という性質の上でアウトなのだ。昔これを破った馬鹿なアニメがあったが、結局伝えたかったはずの戦争の悲惨さは、滅多に話題にのぼらない有様となっている。大失敗もいいところだろう。ゆえに、フェイスレスがそういうことを、少なくとも表面上漫画で描かれる中ではしないことも当然なのだが……だが、フェイスレスの動機は、明らかに性のラインに踏み込んでしまっている。こうなってしまうと、どうにもチグハグな印象が残ってしまうのは必然だろう。例えば世界制服を目指す奴や、快楽殺人鬼のような敵役が、それをしないのは納得できる。同作者的に言えば、白面の者が猥雑な行為を行わないのは当然だ。だがフェイスレスは、違う。こいつは、はっきり言ってしまえば、それどころじゃない悪行を繰り返している。ゾナハ病など、あまりにも鬼畜だ。これをバラまいたのは彼ではないにしても、全ては彼から始まっている。それなのに、なぜかあれをしない。繰り返し言うが、しないこと自体は少年漫画的に正しい。それをしてしまっては終わりだ。そういうことを描きたければ、青年誌でやればいい。しかし、しかしだ。フェイスレスのキャラクターを考えるに、そんなところちぐはぐになる奴では決してないはずだ。やりすぎなくらいに、こいつは悪人のはずだ。なのに、恋愛観だけ小学生のようにふんわりしているのは、いかにも矛盾しているようには見えないだろうか。「人はさらうよ!しかも叩くよ!自分のことは棚に上げて村人に復讐するよ!ゾナハ病とか知ったことじゃないよ!フラレたから世界滅ぼすよ!でもエッチなことはできないよぉ」って、明らかに変である。異常というより、変なのだ。

動機は変えたほうがいいかも

ようするに何が言いたかったかといえば、フェイスレスの動機、ちょっと選択ミスだったのではないかという話である。これが青年漫画だった場合、フェイスレスは間違いなく、あれをしただろう。矛盾はない。彼の、その他の部分で表現されてきた残酷さを考えると、それくらいのことは平気でやってのけるはずだ。それでこその、クソ野郎だ。最低男だ。クズ人間だ。なんたってこいつの悪行、スタートはフランシーヌの誘拐なのである。最低もいいところではないか。そこからどんどんエスカレートしていって、結局彼は、見方によってはブラッドハーレーどころではないレベルの悪行をかましているのだ。動機が下らないこと、行ってきた悪行が甚だしいこと、小物なこと、全て、演出的に正しい。漫画史上でも上位に位置する大悪魔として、彼は存在感を放っている。「夢はいつか叶う」というにふさわしいラスボスである。だが、その動機が男女の話だったせいで、ちぐはぐな印象が生まれているのも確かだと思う。その動機のせいで、もっとひどいことができるのに、していない奴という印象を与えてしまっているのではないか。筆者は少なくとも、この漫画の中で、そこが一番引っかかった。彼がそれを行わない理由は、少年誌の事情であり、作品的な意味はない。そこが惜しい。映画で言えば、一瞬だけカメラが見切れてしまったようなものだ。そうすると、漫画家の事情的な、作品とは直接関係のない裏事情が気になってしまう。そういうのは、意識されないのが一番だろう。他の部分は脱帽するほど素晴らしかった漫画だけに、そこばかりが気になってしまう。フェイスレスの動機が、例えば「一番になりたい」とかであれば、気にもならなかったろうに……。

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他のレビュアーの感想・評価

からくりサーカスの何が面白いって?

絵が嫌い。そんなこと思ってた時もありました(笑)藤田和日郎先生の作品は独特なタッチの作品のため、私と同年代の人の中には苦手な人や、嫌いだと言う人もいました。今ではすっかり先生のファンな私も、「あのインクがすっごい濃くて無駄に歪んで描いてる人」みたいに思ってた時期がありましたw小学生とか中学生くらいの時かな(笑) 今思えばすっごいおバカだなw何がきっかけで読んだのかは、正直あまり覚えてませんwほら、あるじゃないですか。週刊誌なんか読んでる時に、いつもは読まない作品を読んでみたら…。「なんじゃこれ!!」「めちゃくちゃ面白いやんか!!」「うわーなんで最初から読んでなかったんやろ…。」みたいな?wんで、気づいたらどっぷり藤田先生の世界観にはまっちゃってw当時、連載されていたのは月光条例という作品だったんですが、その前に長く続いたからくりサーカスってのがあると知って、少ない小遣いを上手くやりくりした...この感想を読む

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