面白い医療系小説
天城雪彦先生の痛快な態度
先に自分ですることを決めていて、事後報告で他の医師に説明するところが痛快でした。
公開手術を決めた時も、世良先生をはじめ高階先生などに事後報告をして、言いくるめる場面は読んでいて痛快でした。
特に気に入った場面は、「マッディ・ボブ」の患者が死ねばいいというニュアンスの文章を発した時です。
天城先生は、このセリフがでることを予測し、30分後にはギャフンと言わせることが出来ると確信してた点はホントに痛快でした。
ボブの英語を高階先生が先取りしたセリフできちんと返し、ピーコック氏を舞台上へ上がらせて紹介することで、ボブの発言を最低のものにした天城先生のやり方に痛快感が込み上げました。
手術シーンが少ない
医療系の小説として読み始めましたが、国際学会のシンポジウムでのやり取り(会話だけ)で始まり、その後はカジノシーンや東城大での会話の応酬のみで、肝心の医療系としては手術のシーンが少なかった。
この点は少し物足りないなとの印象があります。
しかし、医療シーンになると専門的な用語などが多く出てくるため、読みづらい点もあるが、それが公開手術の場面のみに抑えられていた為、読みやすい小説でした。
「守銭奴にもなろう!」
最後の場面で天城先生が世良先生に「スリジエ・ハトセンターは本当に出来ると思うか?」と問うた場面では、私は世良先生と同じような気持ちで、実現は不可能だと感じました。
しかし、東城大での会話でも天城先生が言ったように、自分が守銭奴となってカネを集め、患者を集め、そしてスリジエ・ハートセンターを実現するんだ!という気持ちには感動を覚えました。
やはり、カネがなければ出来ないこともあり、命は大切だけど優先順位はあるということなどを、気持ちでは分かっていても言葉には出しづらいことを天城先生はハッキリと言った。
なので、私たちが口にし辛い「スリジエ・ハートセンター創設のためには、守銭奴にもなろう!」は私の心に響きました。
キレイごとだけ口にしてもダメだと思い知ったセリフでした。
ギャンブル小説?
医療系小説として読み進めましたが、前半はほぼカジノシーンでした。
世良先生が天城先生を連れて帰れるかどうかのシーンでは、話の流れとして世良先生の勝ちになるだろう、との予測で読み進めていましたが、
この小説のほぼ半分と言って良いくらいがカジノシーンでした。そのため、医療系小説としては物足りなさもあります。
しかし、天城と世良のカジノシーンでは、まさかの”ゼロ”で勝ちもしなければ負けでもない”展開が次のシーンへ誘導しているようで続きが気になり良かったです。
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