ジェントルマンのあらすじ・作品解説
ジェントルマン は、山田詠美(やまだ えいみ)の小説で、講談社から2011年11月25日に初版が販売された。 今作品は、男子高校生・夢生が、眉目秀麗、文武両道、才覚あふれる同級生・瀬太郎の隠された秘密を知ったことからはじまる、恋の恍惚、愛の奈落のサスペンス物語である。 高校生・夢生の同級生に眉目秀麗、文武両道、誰でにも好かれる優しさをもつ人物がおり、その名は坂木瀬太郎という。その才覚から、周囲が瀬太郎をジェン トルマン扱いしているのだが、夢生はどこか冷ややかな目で同級生を見ていた。 ある嵐の日。下校途中に忘れ物をしたことに気づいた夢生が教室に戻ると、女教師を強姦している瀬太郎を目撃したのだが、何もせず傍観してしまう。瀬太郎は夢生に強姦を繰り返していることを告白し、2人は秘密を共有する中になってしまう。 ゲイであることを自覚していた夢生は、強姦を繰り返す瀬太郎に惹かれはじめ、やがて愛を感じるようになるのだった。2人の歪な関係はどこへ向かうのか!?
ジェントルマンの評価
ジェントルマンの感想
ジェントルマン感想
好意の種類の違い夢生と漱太郎。二人がそれぞれ、お互いに感じている「好意」の種類には違いがあるように思った。相手の好意を感じる、要するに、愛されていると実感するときはどんなときか。抱き締められたとき。愛の言葉をもらえたとき。嫉妬されたとき。他にもたくさんあるのだろうが、つまり、相手が自分のことだけを見つめてくれている、と思ったとき、私たちはそう実感できるのではないかと思う。夢生の場合はどうか。漱太郎の起こす行動の一つ一つを夢生は鮮明に心に刻む。中でも至福の瞬間なのは、外面の良い漱太郎が他人の前で自分をぞんざいに扱ったときや、夢生を自分の体の一部のように自然に隣に据えたときだ。愛の言葉をかけてくれるでもない(そもそも漱太郎はノンケだ)、優しく労ってくれるでもない、でもそこにどうしようもなく惹かれている。漱太郎のそういうところに恋をしている。貧しい恋に見えるだろうか。私にはそういう風には思えな...この感想を読む
悪には何が必要か?
雑誌『小説現代』に書き下ろしで一挙掲載された後、単行本化されたこの作品。久々にエイミー節を読んで興奮しました。山田詠美の少年少女物は、とても良質な小説だと思うのですが、私個人はやはりエイミーの「男と女」の話が読みたいんです。山田詠美の既存の作品のような惚れたはれた、を期待して読むと、あてはおおきく外れるかもしれません。主人公の夢生はなんだかもさいし、漱太郎はわるうい奴ですが、その悪さには何か深みとか、重みとか、そういうものが足りてない。後半の展開は少し「生き急ぐ」というか、別にそうじゃなくても…と思う部分が少なからずあります。それでも、この作品のなかで、何度かハッとさせられるところがありました。何十年も読者をやってて、いまだにハッとさせてくれるのか、エイミー、やるね!と、勝手にニヤリとしましたが、お話自体は悲劇のくくりに入るんだと思います…。